大統領の法的権限である戒厳宣言に従って戒厳事務を行い、秩序維持業務を担当した公職者たちが、このような内乱フレーム工作によって今辛酸をなめているのを見て、胸が張り裂けそうです。この方々が大統領の長期独裁のために仕事をしたでしょうか。大韓民国の現実で長期独裁を想像もできないという事実をよく知っている方々で、すでに自分の分野で最高の位置に上がり、これ以上望むこともない方々です。この方々は大統領の法的権限行使によって任された職務を遂行しただけです。
憲法裁判官の皆さま、そして国民の皆さま。大統領という立場で多くの情報を持って国政を眺めると、他人には見えないもの、表にはよく現れない問題点が多く目にとまります。当面は大丈夫そうに見えても、しばらくすれば大きな危機に直面することが大統領の視野には入ってきます。ゆっくりと加熱される釜の中のカエルのように、目の前の現実に気付かないまま、断崖へと向かっているこの国の現実が見えました。
いつ危機ではない時があったのかと考える方もいるでしょう。しかし、これまでの危機が突発的な懸案の危機レベルだったとすれば、今は国家存立の危機、総体的システムの危機という点でその次元が全く違います。
米国のトランプ大統領は就任初日に国家非常事態を宣言し、軍を投入しました。米国が国家非常事態なのかについての判断は異なる可能性があります。しかし、不法滞在者や麻薬カルテル、そしてエネルギー不足など、米国が直面している危機に立ち向かい、米国国民を守るための大統領の決断であることは明らかです。
それでは、わが国の現実はどうですか? 国家非常事態ではないと、断言できますか?
北朝鮮をはじめとする外部の主権侵奪勢力と韓国社会内部の反国家勢力が連携し、国家の安保と継続性を深刻に脅かしています。彼らはフェイクニュース、世論操作、宣伝扇動で私たちの社会を葛藤と混乱に追い込んでいます。
差し当たって2023年に摘発された民主労総スパイ団事件だけを見ても、反国家勢力の実体を簡単に確認できます。彼らは北朝鮮の工作員と接触して直接指令を受け、軍事施設の情報などを北朝鮮に渡しました。北朝鮮の指令に従ってゼネストを行い、バイデン米大統領の訪韓反対、韓米連合訓練反対、梨泰院惨事反政府デモなどの活動を繰り広げました。さらに、北朝鮮の指示に従って選挙に介入した状況も明らかになりました。先の大統領選挙の直後には「大統領弾劾の火種を燃やせ」と具体的な行動指令まで出されていました。実際に22年3月26日、「尹錫悦(ユン・ソンニョル)先制弾劾」集会が開かれ、24年12月初めまでになんと178回もの大統領退陣、弾劾集会が開かれました。この集会には民主労総傘下の建設労組、言論労組などが参加し、巨大野党議員たちも登壇しました。北朝鮮の指令通りになったのではないですか?
「今の世の中にスパイがどこにいるのか」と言う人もいます。しかし、スパイはいなくなったのではなく、大韓民国の自由民主主義を倒す体制転覆活動へとさらに進化したのです。
ところが、このようなスパイ活動を防ぐ韓国社会の防御膜はむしろ弱くなり、あちこちに穴が開いた状態です。
共に民主党政権の立法強行で、2024年1月から国家情報院(韓国の情報機関)の対共捜査権が剥奪されてしまいました。スパイ団事件はノウハウを持つ機関で長期間緻密に内査、捜査をしなければなりません。ところが、まともに準備する時間もなく、専門性と経験が足りない警察に対共捜査権が渡ってしまいました。スパイが横行する環境をつくったのです。
それに、せっかく捕まえても裁判が長期間放置される状況まで発生しています。現在裁判が進行中のスパイ事件が民主労総スパイ団、昌原スパイ団、清州スパイ団、済州スパイ団の4件にもなります。ところが、清州スパイ団事件は一審判決まで29カ月以上かかり、民主労総スパイ団事件も一審判決に1年6カ月がかかりました。彼らは拘束期間満了後に釈放され、一審判決で法廷拘束されるまで堂々と街を闊歩(かっぽ)していました。現在、昌原スパイ団事件は2年近く裁判が中断されており、済州スパイ団事件も1年10カ月間裁判が空転中です。彼らも全員釈放された状態です。スパイを捕まえることもできず、捕まえてもまともに処罰もできないのに、このような状況が果たして正常ですか?