裁判所は21年9月、三菱重工業の韓国国内での差し押さえ財産に対する売却命令を出した。しかし、三菱がそれを不服として抗告、再抗告。事件は22年4月から大法院で係争中となっている。徴用工被害者支援団体は大法院が韓国政府の顔色をうかがっていると批判し、一日も早く現金化命令が下されるべきだと主張している。
18年に大法院で原告が勝訴した事件と類似する徴用工賠償訴訟も全国で約80件が進行中だ。原告は約1200人に達する。政府はこのうち約200~300人が証拠を全て備えており、勝訴する可能性があるとみている。
今月9日にも徴用工被害者のチョン・シンヨン氏(女性)が三菱重工業を相手取り起こした損害賠償訴訟の審理が光州地裁で行われた。チョン氏が直接出廷し、「日本政府と三菱重工業は心からの謝罪と賠償をすべきだ」と要求した。チョン氏は14歳の時、三菱重工業の名古屋航空機製作所で勤務したという。
徴用工賠償問題に詳しいある専門家は「原告4人に対する賠償金供託が最終的になされず、被告企業の資産の現金化命令も大法院で認められれば、韓日関係は再び悪化する恐れがある」とし、「この際、国民の共感を土台に特別法をつくるか、他の方策を考慮すべきだ」と指摘した。
■「被告企業は来年の総選挙まで動かない」
尹錫悦大統領が提案した「第3者弁済案」の成功と韓日関係の安定的発展は、韓国側の努力だけで実現できない。日本政府、市民社会、 被告企業の呼応が絶対的に必要だが、これまでの日本の反応は韓国の期待する水準には満たないと評する見方が多い。岸田首相は5月にソウルを訪問し、徴用工被害者に「胸が痛い」と話した。 同月、広島で行われたG7で尹大統領と韓国人原爆犠牲者慰霊碑を共に訪れたことが歴史問題に関連した唯一の立場表明だ。