■いかにしてLeeumの懐に収められたのか
7年前の発見当時、韓国の学界は「鳥肌が立つほど精巧な貝殻の文様が際立つ秀作」と歓呼した。高麗螺鈿漆器は青磁、仏画と並び高麗美術を代表する最上級の工芸品だが、実物は極めてまれで、これまで世界で確認されたのはわずか16点。この作品は保存状態が極めて良好な上、これまで唯一の八角盒という形態から注目を集めた。本紙の記事でニュースを知った相当数の専門家が日本の展示場を訪れ、実物を鑑賞したという。
韓国文化財庁の国外所在文化財財団も、作品を購入するため現地調査に乗り出していたことが確認された。財団関係者は「日本の所蔵家と接触し、韓国国内の螺鈿関連の専門家らの検討まで経たが、価格が極めて高く、高麗時代ではなく朝鮮王朝時代の作品である可能性も浮上し、財団がこれ以上乗り出すのにはさまざまな面で負担があった」と語った。
それなのにどうしてこの作品がLeeumにやって来たのか。Leeum側は「2015年に開かれた『細密可貴』特別展が決定的なきっかけだった」と明かした。当時、Leeumは世界に散らばる高麗螺鈿のうち8点を英国・米国・オランダ・日本から借りて展示し、観客は緻密に刻まれた文様と幻想的な輝きに目を奪われた。Leeum関係者は「名品を1点1点借りてきて1カ所に集めたことで、高麗螺鈿がどれほど貴重で重要なのかが分かり、所蔵の必要性を切に感じた」と語った。崔応天(チェ・ウンチョン)国外所在文化財財団理事長は「展示を準備する過程でLeeum側はこの作品の存在を知り、ちょうど日本人の所蔵家も売ろうと言う意思があり、購入が実現したらしい」と伝えた。