驚くべきことに、現在文政権下で進められている政策の方向性は、過去のベネズエラと非常によく類似している。新自由主義を排斥して国家主義に向かおうとしている点、資本統制、参与民主主義、民衆の権力強化、反大企業政策、福祉政策の拡大、などがそうだ。今韓国経済は深刻な混乱期を迎えている。最低賃金の急激な引き上げと勤労時間の短縮は、自営業や零細商工業者の経済活動を圧迫し、今ではストライキを誘発している。経済見通しに対する不安、「積弊」の独走と自画自賛に対する社会的反感、健全な批判とけん制が消えた左翼独裁が横行したことで、社会全体が活力を失い、不安と悲観におびえている。
韓国は、「南米の希望」であり「左翼政治のロ-ルモデル」とされたベネズエラとは大きく異なる点がある。第一に、韓国経済は米国資本の「植民地」ではない。韓国は今では自活力を備えた経済構造を持ち合わせているほか、潜在的競争力を年々育んでいる。ベネズエラが米国大資本の試験場だったのとはベースからして違っている。第二に、韓国にはベネズエラにはない「北朝鮮」という変数がある。北朝鮮の存在は、韓国が安保を至上課題として取り上げるほかない環境を造成している。第三に、韓国には石油がない。ベネズエラは政権が滅びても、石油という資源は残る。韓国は、滅びればそれでおしまいなのだ。
韓国をあえて今にも滅びそうな国と比べようとするのは、何もサディズム(加虐症)や「左翼政権たたき」などといった低い次元からのものではない。わずか10年という短い間に昨日の英雄が今日の笑い者となり、昨日の富国が貧国の奈落に陥る可能性があるという生々しい現実が悲惨に感じられ、恐ろしいからだ。チャベス路線を敬愛した韓国の左翼、進歩陣営が相変らずその路線を追従する傾向を見せているのも問題だ。