韓国大統領府(青瓦台)は、金起式(キム・ギシク)金融監督院長の国会議員時代の外遊について、「適法だという結論を下した」と表明した。秘書室長から検討を指示されたチョ・グク民情首席秘書官による判断だという。翌日、野党は金院長を収賄の疑いで検察に告発した。告発もない段階で青瓦台が「適法」判断を下した。そして、報道官を通じ、それを国民に公表した。
民情首席秘書官は大統領の法律面でのブレーンだ。そして、実態としては警察や検察、国家情報院などの捜査機関の上に君臨している。大統領が握る飴とむちのうち、むちの執行を代行する役割を担っているわけだから当然だ。しかし、これまで民情首席秘書官の行動が行政府の権限である「公務員の誤りの是正」から逸脱することはまれだった。現在、民情首席秘書官は合法か違法かを判断する司法機能まで行使している。先ごろ、民情首席秘書官が立法権に属する憲法改正案を発表した際にも同様の印象を受けた。なぜ権力が入れ替わるたびに民情首席秘書官の干渉範囲が広がるのか不思議だ。
金融監督院長の任免は大統領の権限だ。任免判断にはその人物の行ってきたことに対する法律的検討が必須だ。それについて、「司法に対する越権と言えるのか」との批判もあろう。それには同意する。しかし、その結果が報道官の口から発表されるとなれば話が違ってくる。どんな判断を下すにせよ、「青瓦台は手続き上問題がないとみているが、適法かどうかは司法機関に判断を任せる」と言っておけばよかった。にもかかわらず、民情首席秘書官による「適法」判断を公表した。その瞬間、民情首席秘書官は事実上の司法機能を行使したことになる。