米国防総省の高官は「現在、米国の戦略体系では、北東アジアの戦域が韓半島と台湾海峡の二つに分かれているが、今後は一つに統合しようという議論がペンタゴン(米国防総省)から出てくる可能性がある」と述べた。梨花女子大の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「米国は中国が2027年に台湾を侵攻し、迅速に占領できる能力を確保すると見ており、(これをけん制するための)同盟の役割調整をその時までに終える考えだ」として「結果的に在韓米軍は台湾で役割を果たすことになり、韓国は北朝鮮の在来式戦力を自力で防がなければならない状況に直面するだろう」と述べた。また、米国が韓米連合司令官(在韓米軍司令官兼任)の持つ『戦時作戦統制権』を韓国軍に移譲する手続きを加速させる可能性もある。
米国は、中国に集中する一方で、欧州・中東・東アジアでは一歩引く可能性が高い。その代わりに、ロシアへの対応は北大西洋条約機構(NATO)に、イランへの対応はイスラエルとサウジアラビアに、北朝鮮への対応は韓国・日本に、多くの役割を担わせるということだ。外交筋は「トランプ大統領は、米国がこれまで同盟国に代わって過度な負担を負ってきたという認識が強い」と述べた。
韓国には、すぐさま在韓米軍駐留経費の韓国負担の増額や国防費の引き上げなどの圧力が掛けられる可能性が大きい。トランプ大統領は昨年、韓国を『マネーマシン』と呼び、韓国が在韓米軍駐留経費のうち100億ドル(約1兆5000億円)を負担すべきだと主張した。これは韓国が今年支出した分担金1兆4028億ウォンの約10倍に達する。
米国が韓半島政策を変化させる可能性が高まったことから、韓国政府も対応を急ぐべきとの指摘が出ている。申範澈(シン・ボムチョル)元国防部(省に相当)長官は「在韓米軍の役割が中国対応へと拡大されるのなら、対北朝鮮態勢はどうしても弱体化してしまう」「その補完策として米国側に、グアム地域への戦術核配備を要求する可能性もある」と述べた。グアムに戦術核が配備されれば、戦略爆撃機を2時間以内に韓半島に展開させることが可能になるため、韓半島に戦術核が配備されるのとほぼ等しい効果が生じるというわけだ。北朝鮮に対する核抑止力を強化するために、米国に対し、韓国による原子力潜水艦開発を認めるよう働き掛けるという案も浮上している。
ただし、今回の指針が「暫定的(interim)」という性格を帯びており、今後の韓米交渉でかなりの部分が調整されるとの見方もある。ジョセフ・ユン駐韓米国代理大使も先ごろ、在韓米軍の役割が変更されるという懸念が出ていることなどに関連し「在韓米軍の核心的・基本的な任務は、トリップワイヤー(防御の第一線として機能する小さい軍事力)の役割」だとして、その可能性を一蹴した。
盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者、ヤン・ジホ記者
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