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各家庭にある、あの安い鎮痛剤ががん転移を防ぐ原理とは

 簡単に手に入れることができる鎮痛剤アスピリンが免疫体系を活性化し、がん転移を防ぐのに役立つという研究結果が発表された。

 英国BBCなどが3月6日(現地時間)報じたところによると、ケンブリッジ大学のラフール・ロイチョドゥリ教授が率いる研究チームは、日常的に使用されている鎮痛剤アスピリンが免疫体系のT細胞を活性化させ、がん細胞の転移を抑制することを確認した。今回の研究結果は、科学ジャーナル「Nature」に掲載された。研究チームは、アスピリンが一部の患者には出血や胃潰瘍など深刻な副作用を起こす恐れがあるとし、がん患者たちはアスピリンを服用する前に必ず医師に相談しなければならないとアドバイスした。

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 これまでの研究では、低用量のアスピリンを毎日服用している人は乳がん、大腸がん、前立腺がんなどの転移が減少することが分かったが、正確なメカニズムは明らかになっていない。今回の研究は、アスピリンの抗がん効果に対する科学的根拠を提示したという点で意味がある。転移とは、原発性腫瘍から離れている臓器へとがん細胞が広がるもので、世界中のがんによる死亡の90%が転移によって発生しているということが分かっている。ロイチョドゥリ教授は「初期段階のがん患者たちが、手術などの治療を受けた後にも微小転移によって再発するケースが多い」とした上で「がんが最初に広がるときが免疫攻撃に最も弱い時期」と主張した。

 研究チームは、実験用ネズミを対象に実施した実験で、810個の遺伝子を分析し、がん転移に影響を及ぼす15個の遺伝子を発見した。特に「ARHGEF1」というタンパク質を生成する遺伝子がないネズミは、肺や肝臓へのがん転移が顕著に減少した。研究チームは、ARHGEF1が転移性がん細胞を認識し、殺すことができるT細胞を抑制するということを明らかにした。細胞シグナルを追跡した結果、血小板で産生されるトロンボキサンA2(TXA2)にT細胞がさらされると、ARHGEF1が活性化した。このとき、アスピリンはT細胞を抑制するトロンボキサンA2の数値を低下させ、T細胞が活性化され、これががん転移を防ぐメカニズムだと研究チームは説明した。

 研究チームは「トロンボキサンA2がT細胞抑制効果を活性化する分子シグナルだという点は、予期せぬ発見だった」とした上で「アスピリンやこの経路を標的とする薬物は、既存の抗体基盤の治療法に比べ、費用が抑えられる」と主張している。

 研究チームは今後、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMRC臨床試験部署と協力し、研究結果を実際に臨床に適用する方法を模索する方針だ。アスピリンのがん再発防止効果を研究しているユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのルース・ラングレー教授は「今回の発見により、臨床試験の結果解析とアスピリン治療の最適な対象者選別が可能になるだろう」と見込んでいる。

イ・ヘジン記者
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