■進歩系の裁判官も「棄却」に加勢
大統領権限代行だった韓首相が「内乱常設特別検察官」の任命を回避した事案も、裁判官の間で法理の適用が食い違った。鄭桂先裁判官は「非請求人(韓首相)が特別検察官候補者の推薦を依頼せず、任命手続きが中断し、現在までも非常戒厳に関連した事件に対する捜査権を巡る議論で混乱と対立が増幅している」と、ただ一人罷免を主張した。
残りの裁判官5人は、法律違反ではなく弾劾事由にならない、ということで意見が一致した。各裁判官は、内乱特検に関する定めが憲法裁の権限争議審判に付されていたことを指摘して「特別検察官候補者の推薦依頼が適切であるかどうか、およびその影響を、検討すべき時間が必要であった事情がうかがえる」とした。また特検法では、特別検察官の捜査が決定された場合、大統領は特検候補者推薦委員会に「遅滞なく」二人の候補者の推薦を依頼することになっているが、「遅滞なく」についての意味や基準がなく、統一した判例もないという点を考慮した、と明かした。国会は「韓首相が特別検察官の任命を行わず、関連の捜査を遅延させ、逃避・証拠隠滅を招いた」と主張したが、受け入れなかったのだ。
■内乱共謀、特検法回避などは弾劾事由にならず
韓首相が保守系与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表=当時=と「共同国政運営」を試みたこと、尹大統領の内乱行為を共謀・黙認・ほう助したこと、金建希夫人特検法などを拒否したことなど残りの諸事由は、裁判官8人全員が棄却した。認容意見を出した鄭桂先裁判官も、この争点については「違法ではない」と判断した。野党が政治的目的で無理にねじ込んだ訴追事由だと判断したのだ。
特に、韓代表との共同国政運営を試みたという疑惑について、裁判部は「非常戒厳宣布・解除の後、民心の収拾と安定のために行政府と与党が互いに協力して最善を尽くそうという意思を国民に披歴したもの」だと判断した。
キム・ウンギョン記者、キム・ナヨン記者