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フィリピン地方自治体に寄付する華人団体の裏の顔はスパイ団だった

■タルラック市に現金、バイクなど寄付

 2022年7月には王容疑者がタルラック市のアンヘレス市長に50万ペソの寄付金を手渡す写真が中国のソーシャルメディアに掲載されました。ボランティア団も市警察当局にパトロール用バイク10台を寄贈しました。同年9月にはマニラ市警察にバイク10台を寄付したそうです。

 ルソン島中部にあるタルラック州は、軍事的に敏感な場所です。かつて米陸軍が使用したオドネル基地があり、米空軍が頻繁に利用するクラーク空軍基地からも遠くありません。米軍とフィリピン軍の共同演習である「バリカタン」(肩を組むの意)もタルラック州クロバレー射撃場で行われます。タルラック市はその州都です。

 ロイターによる報道後、アンヘレス市長は窮地に追い込まれました。市長は3月5日の声明で「バイクを善意で受け取り市警察当局などに配分した」と説明しました。また、2023年に市議会の承認下でボランティア団から30万ペソを受け取り、うち10万ペソを学生たちの歯の衛生教育に使用し、残りの20万ペソは残っているとしました。しかし、写真のように2022年に50万ペソを受け取った事実はないと否定しました。マニラ市もボランティア団から10台のバイクを受け取った事実を認め、「法的な手続きに従って寄付が行われた」としました。

 フィリピン国家捜査局(NBI)は王容疑者ら5人の中国人をスパイ容疑で起訴しました。有罪となれば最高で禁錮20年の刑を言い渡される可能性があります。

■フィリピン版「内政干渉禁止法」推進

 フィリピンは中国共産党の統一戦線組織の管理を受ける華人団体が地方自治体に金をばらまき、スパイ行為まで行っていた事実にショックを受けています。ロンメル・オン・フィリピン海軍退役海軍少将は「中国企業と華人団体が北京のテーマを宣伝する上で重要な中間の役割を果たしている。フィリピンの地方自治体は経済的インセンティブと寄付による中国の影響力拡大に弱い」と述べました。フィリピン大統領府は3月3日、「寄付が善意で行われたなら問題ないが、隠れた動機があるなら調査が必要だろう」と指摘しました。

 政府レベルで外国の内政介入を阻止するための立法も検討されています。外国の団体から寄付を受ける際には大統領の承認を義務付けることを骨子とする草案を策定しているということです。オーストラリアも2018年に中国を念頭に外国人の政治資金寄付などを制限する通称「内政干渉禁止法」を制定しています。

 中国外務省はこれまでフィリピン国内で中国のスパイに関する発表があるたびに「根拠のない憶測」だとして否定しており、今回もロイター通信の取材に一切答えなかったということです。

崔有植(チェ・ユシク)記者

【写真】フィリピン地方自治体に寄付した時の華人団体の様子

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