■採用後も続く「パパ・チャンス」
この息子は選管採用後も「パパ・チャンス(父親のコネ)」が続いた。金世煥・元事務総長は2020年11月、仁川市選管の総務課長に「息子の外部教育が終わったら、江華郡選管に戻らず、すぐに仁川市選管に移れるようにしてほしい」と話した。仁川市選管はこれより前の同年7月、「江華郡選管で少なくとも3年間勤務しなければ、上級機関である仁川市選管への異動を申請できない」という規定を設けていた。ところが、仁川市選管の総務課長は部下職員に異動志願資格を「勤続3年」から従来の「勤続1年」に引き下げるよう指示した。 2020年1月から江華郡選管で勤務していた金世煥・元事務総長の息子が異動を志願できるようにしたのだ。息子は同年12月、志願者4人のうち2位で選抜された。
■オフィステルの家賃も選管が支給
金世煥・元事務総長は息子の転入審査が始まる前の2020年11月末、仁川市選管の総務課長に「(息子が)官舎に入居できるようにしてほしい」と指示したことも調査で分かった。江華郡から仁川市内までの通勤は難しいというのが理由だった。仁川市選管の官舎に空き部屋がないとの報告を受けた元事務総長は、中央選管施設課長に電話し、「仁川市選管に官舎を割り当てられる方法を調べよ」と指示した。
金世煥・元事務総長の息子は中央選管が官舎の追加割り当てを決める前の同年12月25日、自身の名義でオフィステル賃借契約を結んだという。保証金300万ウォン(現在のレートで約30万円)に家賃35万ウォンという条件だった。契約書には「家賃は仁川市選管が支払う」という特約条項も盛り込まれていた。3日後、金世煥・元事務総長は仁川市選管総務課を訪れ、契約書を渡して「賃借官舎」にするよう要求した。その後、中央選管の承認を受けた仁川市選管は12月29日、賃借人の名義を仁川市選管に変え、息子の契約を引き継いだ。ところが、このオフィステルは先順位根抵当8400万ウォンが設定されている「危険物件」だった。保証保険加入が難しく、その後保証金を用意できない可能性もある状況だったが、中央選管を経て官舎として使用することが承認されたのだ。
朱晋佑議員は「選管の不正腐敗の一端を示す事例だ。徹底した捜査を通じ、不正を明らかにしなければならない」と述べた。
イ・ミンジュン記者