反米感情が広がっている中国では、年明けにホワイトハウスに返り咲きを果たすトランプ米次期大統領の人気が一部で高まる怪現象が起きている。英経済誌エコノミストは最近、トランプ氏が強硬な対中関税政策を予告しているにもかかわらず、同氏の保守的な価値観と他国の内政に無関心なスタンスを支持する中国人が急増していると伝えた。「米国を再び偉大な国に」という旗を掲げたトランプ氏が「中国夢(中華民族の偉大な復興)」の実現を目指す中国人の心をつかんだ理由は何か。
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■保守的な男性から愛国主義者まで
まず、中国の保守的傾向の男性は性的マイノリティー(性的少数者)、フェミニズムに対するトランプ氏の強硬な立場に熱狂している。中国でも徐々に活動の幅を広げる性的マイノリティーなどに対する嫌悪をトランプ支持で噴出させているわけだ。中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」でLGBT反対運動を展開するニン・ファンガン医師(漢字不明)は「トランプの大統領選勝利から中国政府が学ぶべき教訓は多い。最も重要なことは『やかましい声』が国民の意思を代弁していないということだ」と述べた。
中国の小粉紅(シャオフェンホン、若い愛国主義者)もトランプ氏を支持する代表的な勢力だ。彼らはトランプ氏を「懂王(あらゆることを知っていると言い、過度な自信に満ちた人物)」、「川建国同志(トランプ氏の貿易戦争が中国の国力向上に貢献したという意味で皮肉を込めた呼称)」などと呼び、憎らしさと裏腹に親しみも持っている。トランプ氏が遊説期間に銃による襲撃を経験するという「ドラマ」まで加わり、一部の小粉紅はトランプ氏を強い指導者の象徴だと褒め称えた。
トランプ氏の政権返り咲きが中国に実質的な利益をもたらすと信じる米国留学派も増えている。微博でフォロワーが180万人いるハーバード大学出身の政治評論家、兔主席(ペンネーム)は12月11日、「反中政治がピークに達した米国でトランプ氏は『中国を最も嫌う』政治家になった」と評した。兎主席は経営者の色彩が強いトランプ氏について、中国の政治制度を変えるつもりは全くなく、台湾、新疆ウイグル自治区など中国の内政問題に無関心で、米中による軍事衝突を避けようとしていると分析した。
トランプ氏当選前の11月初め、北京で会った中国の有力メディア記者は「新聞を開けばハリス支持の声が聞こえるが、ソーシャルメディア上はトランプファンであふれている」と述べた。当時中国政府を代弁する主流メディアや学者は、中国により慎重にアプローチする民主党のハリス候補を好んだが、中国の大衆は何をはばかることもない態度のトランプ氏になびく場合が多かったことを示している。