中国の検閲当局は年の瀬にある作業に追われています。民間の経済専門家が「実体経済は政府統計よりはるかに悪い」と発言し、それがインターネットメディアやソーシャルメディアで急速に拡散すると、関連記事や映像を削除していると言うのです。
中国は12月11日から2日間、習近平主席の主宰で来年の成長率目標や経済政策の方向性を決める中央経済工作会議を開きました。それを前に中国経済に対する悲観論が拡散するのを防ぐ狙いがあったとみられます。
【写真】4人目の妻は息子の元恋人…「22億円収賄」中国の大手国有銀行元会長
海外のソーシャルメディアに掲載された講演原稿によれば、中国政府が緊張してもおかしくない内容でした。国有金融機関である国投証券のチーフエコノミスト高善文氏は「この3年間で中国経済成長率が毎年3ポイント、計10ポイントが過大評価された」と述べました。2023年に中国政府が発表した経済成長率は5.2%だったのですが、実際は2.2%程度だったという指摘です。
東北証券のチーフエコノミスト、付鵬氏も「この2年間で配車アプリのドライバーが2000万人増えた。中産階級の没落が本格化している」と述べました。
■「成長率統計、消費・投資の推移と食い違い」
高氏は12月3日、広東省深圳市で開かれた2025年の投資戦略説明会で講演し、今年の中国の経済状況を分析しました。
高氏は中国経済の現状を「活気あふれる老年層、意気消沈した若い世代、希望を失った中年層」と要約しました。老年層が予測可能な老齢年金に期待して安定的な消費生活を送る一方、働き口がなく未来の収入増に対する希望も失った青年層は衣食にかける費用を節約しながら何とか持ちこたえているというのです。中国31省・直轄市の統計によれば、若年層の割合が高い地域ほど消費の伸びが低下しているといいます。
高氏は2020年に不動産バブル崩壊が始まって以降、中国政府が発表した3年間の成長率統計に対しても疑問を提起しました。都市就職人口の推移、投資の伸び、物価指数の変化などとつじつまが合わないというのです。2020年にコロナ禍が始まる前までは、中国は消費と投資の伸びが経済成長率と同じ傾向を示していたそうです。しかし、この3年間は政府が発表する成長率が消費や投資の伸びよりはるかに高いといいます。
高氏はそうした分析を根拠に挙げ、過去3年間、毎年成長率が3ポイントずつ過大評価され、合計すると10ポイントに達すると指摘しました。政府発表数値から毎年3ポイントを差し引けば、消費・投資の伸びと推移が似ているといいます。