「尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領逮捕」を主張してトラクターを運転し、ソウル市竜山区の韓国大統領官邸に進入しようとした全国農民会総連盟(全農)や全国民主労働組合総連盟(民主労総)などが21日、警察と衝突し、同市瑞草区南泰嶺の果川大路一帯で翌日までの28時間にわたり対峙(たいじ)した。これらは22日午後4時40分ごろ、警察が壁を作るように並べていた車を撤去するや、大統領官邸までトラクターを運転して行進した。このため、週末のソウル一帯の交通に深刻な渋滞や混乱が発生した。
【写真】ソウル竜山区の韓国大統領官邸近くに集まったトラクターと群衆
ソウル警察庁は当初、市民の交通に支障を来すとして全農のトラクター進入を許可しなかった。しかし、全農の「全ボン準(チョン・ボンジュン)闘争団」に所属するトラクター約30台とトラック約50台が、警察が壁のようにバスを並べて作った阻止線の前に居座った。その中の一部はトラクターで警察のバスを持ち上げようとしたり、トラクターの窓ガラスが割れたりするなどして、衝突も発生した。デモに加勢した民主労総組合員2人は警察に対する暴行容疑で連行された。警察はこのような行為が現行の「集会および示威に関する法律」(集会・デモ法)上の届出範囲逸脱・無届デモだとして「違法行為」と見なした。
「12・3非常戒厳事宣布」以降、韓国の全国各地で尹大統領弾劾賛否デモが行われ、混乱している中、民主労総が「反政府闘争」ムードをあおっている。このため、民主労総の違法デモが頻繁に行われるようになるのではないかとの懸念が出ている。民主労総は12日、当初届け出ていた同市竜山区の南営駅一帯を離れ、大統領室や大統領官邸に向かうなどの「奇襲進撃」をした。
先月9日の政権退陣を求める集会では警察・デモ隊の大規模衝突により警察官105人が負傷した。民主労総はこの時、警察の阻止線を暴力で突破し、民主労総組合員10人が警察官暴行容疑で逮捕された。警察はこの時の集会を「違法・暴力デモ」と規定し、民主労総指導部が組織的に指揮した状況を集中的に捜査した。
ところが、「12・3非常戒厳事宣布」後、民主労総組合員らは尹大統領を「内乱の首謀者」と名指しし、一般市民もこれに同調している。現職大統領の内乱疑惑に関与したとして、趙志浩(チョ・ジホ)警察庁長と金峰埴(キム・ボンシク)ソウル警察庁長が現職のまま逮捕されるという初めての状況に陥った警察も動揺している。
警察は当初、市民の交通に支障を来すとして全農のトラクター行進に「制限通告」をした。だが、デモ現場では民主労総だけでなく最大野党・共に民主党の議員や一般市民まで加わり、「憲法で保障されている集会・結社の自由を過度に制限している」と抗議した。
共に民主党の金城会(キム・ソンフェ)議員らは「李鎬永(イ・ホヨン)警察庁長職務代行に会い、全農のトラクターが竜山区漢南洞まで進入できるよう説得した」と述べた。結局、警察は阻止線を解除し、トラクター10台がソウル中心部に進入できるよう許可した。
現政権発足以降、2022年の貨物連帯ストライキに対する政府の業務開始命令や、建設現場違法暴力行為に対する警察庁国家捜査本部の特別取り締まり活動などにより、民主労組は勢力が衰えた。また、元幹部は北朝鮮の指令を受けてスパイ活動をしたとして、先月の一審で懲役15年の有罪判決を受けている。