伝家の宝刀「団体観光禁止」が通じない…中国を慌てさせた島国・パラオ

パラオ、反中のウィップス大統領が再選に成功
「観光客100万人を送ってやる」といって台湾との断交を要求したが…
パラオが拒否するや団体観光を減らして報復

 米国大統領選挙があった11月5日、フィリピン東方の太平洋の島国パラオでも、中国を緊張させる大統領選挙がありました。反中路線を固守して来た現職のスランゲル・ウィップス・ジュニア大統領の再選が懸かった選挙でしたが、結果はウィップス大統領の圧勝でした。

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 中国は先の数年間、経済支援を武器に、台湾と外交関係を結んでいる南太平洋の島国を攻略してきました。2009年のソロモン諸島とキリバスに続き、今年1月にはナウルが台湾に背を向け、中国と修交しました。しかしパラオは台湾との外交関係断絶を断固拒否しました。

 中国は、観光産業への依存度が高いパラオを揺さぶるため中国人の団体観光を禁止し、現地メディアを通して親中世論の造成に乗り出すなどの圧迫に出ましたが、パラオを屈服させることはできませんでした。パラオはむしろ、中国との間を行き来する自国の航空便の運航を中断することで迎え撃ちました。

■得票率57.5%で当選…親中候補は立候補もできず

 今回の大統領選挙はウィップス大統領とトーマス・レメンゲサウ元大統領の両雄対決という展開になりました。親中傾向の新聞経営者モーゼス・ウルドン氏は大統領選挙への挑戦を宣言しましたが、支持率が低く、立候補すらできませんでした。ウィップス大統領は57.5%の得票率でレメンゲサウ元大統領(41.3%)を抑え、再選に成功しました。

 ウィップス大統領は、大統領選挙を前後して中国を強硬に攻撃しました。今年9月、外信のインタビューで「2020年の大統領選挙直前、ミクロネシア連邦駐在の中国大使が電話をかけてきて、年に100万人の観光客を送ってやるつもりだから台湾と断交しろ、と要求してきた」「この要求を拒否すると中国人観光客を減らした」と暴露しました。

 大統領選挙に勝利した後に行われたフランス通信委(AFP)のインタビューでは「中国の海洋調査船が最近、排他的経済水域(EEZ)を侵犯した」とし「旗を掲げて警告しても、われわれの主権や境界線を無視した」と主張しました。パラオの海底山脈2カ所に中国式の名前を付けた事実も公開し「何を意図しているのか」と反問もしました。

 中国は外交部(省に相当)や共産党機関紙「人民日報」などが乗り出して「パラオは国連決議に背いて台湾と修交している」「国家と国民の利益のため正しい選択をすべきだ」と反撃しました。しかし、人口14億人の国が2万人にも満たない島国の強力な国際世論戦にうろたえている様子でした。

■1994年に独立した人口1万8000人の小国

 パラオはフィリピンから東に850キロ進んだところにある島国です。340の島で構成されていますが、全体の面積は459平方キロで、これはソウルよりも狭いです。1947年に米国が統治する太平洋諸島信託統治領の一部に組み込まれましたが、81年に自治領になり、94年に共和国として独立しました。

 米国とは自由連合盟約(COFA)を締結しています。米国はパラオの安全保障を守ると共に、領空と領海、領土を軍事的に活用する見返りとして毎年5000万ドル(現在のレートで約77億円)前後の財政支援を行います。

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