10月1日の「国軍の日」に、怪物ミサイルと呼ばれる「玄武5」弾道ミサイルが初公開されたことを受け、中国は緊張している様子です。玄武5は弾頭重量が8トンと、世界で最も弾頭が重いミサイルです。有事の際に、地下100メートルの深さのバンカー(掩蔽壕〈えんぺいごう〉)に隠れる北朝鮮指揮部や核施設をたたくためのミサイルです。
玄武5は、8トンの弾頭を積んだときは射程が300キロですが、弾頭重量を1-2トンに減らせば射程は中距離弾道ミサイル(IRBM)水準の3000-5500キロに伸びるといいます。中国はこの点を懸念しています。事実上、中国の東風26(DF26)に近いIRBMで、中国の領土の半分以上が玄武5の射程内に入るのです。
9軸の車両を利用した移動式発射台、高圧ガスでミサイルを押し上げて空中で点火するコールドローンチなどにも不審そうなまなざしを向けています。防空能力が足りない北朝鮮を狙ったミサイルにしてはあまりに高性能で、事実上、中国けん制を念頭に置いて開発したのではないか、というわけです。
■発射重量はDF26の1.6倍
中国メディアは、このミサイルが事実上のIRBMだという点にフォーカスして報道しました。官営の澎湃新聞は「弾頭重量を1トンに減らせば射程は5000キロに達する」とし「韓半島はもちろん、北東アジアの多くの地域が射程内に入る」と伝えました。新浪ドットコムも「コールドローンチ方式などを含め、中国軍のIRBM『東風21』の初期形態に似ている」「玄武5ミサイルの長距離発射能力を軽く見てはならない」と記しました。
ある軍事ブロガーは「大陸間弾道ミサイル(ICBM)に迫るミサイル」だと言いました。中国のDF26、ロシアのイスカンデル、インドのアグニ3など、主要国の中距離および短距離弾道ミサイル(SRBM)の弾頭重量は500キロから2トン程度です。
中国は2015年9月の「世界反ファシズム戦争勝利70周年」軍事パレードで、グアム島攻撃用IRBMのDF26を初公開しましたが、玄武5をこのミサイルと比較する分析はかなりありました。「韓国版DF26」というわけです。DF26は射程が5000キロで長さ15メートル、直径1.7メートル、総発射重量は20トンです。玄武5は長さ16メートル、直径1.6メートルで総発射重量は36トン。玄武5の発射重量はDF26の1.6倍(原文ママ)になるわけです。
■「中国を狙って迎撃回避機能も備える」
玄武5の性能に対しても神経をとがらせています。玄武5はイスカンデルと同じ形の弾頭を用い、ターミナルフェイズ(最終的な段階)で変則機動が可能だといいます。防空網での迎撃は容易ではないでしょう。
中国の軍事ブロガーは、韓国軍がいずれ機動再突入体(MARV)、複数個別誘導再突入体(MIRV)なども開発して玄武5に搭載するだろう、との見方を示しました。MARVは、弾道ミサイルが大気圏に再突入する際に機動飛行しつつ、レーダー誘導によって正確に目標をたたく弾頭を指します。MIRVは、このような弾頭が複数入っている再突入飛行体だと言えます。それだけ迎撃は容易ではなくなります。