独自の核武装は韓国にとって万病に効く薬なのか【寄稿】

 北朝鮮の核武装に対抗して韓国も独自の核兵器を保有すべきだという主張は、各種の世論調査で着実に60%以上の支持を集めてきたが、最近ではさらに浮き彫りになる兆しを見せている。先の光復節には、大韓民国守護予備役将星団(大守将)をはじめとする韓国国内24の安保団体の総連合が「核武装千万人国民署名運動」を開始し、ここには保守系与党「国民の力」の現役議員らも一部参加している。金竜顕(キム・ヨンヒョン)国防相候補者も核武装の可能性を開いておくかのような言及を行ったことがある。北朝鮮が非核化を拒否して核武力の増強に執着している現実は、韓国の核拡散防止条約(NPT)脱退と独自核武装を正当化して余りある。しかし核武装は、名分にとどまらず安全保障上の付加価値を冷徹に吟味して決定すべきものだ。核武装を主張するのであれば、少なくとも、三つの問いに答えることができなければならない。

 第一に、核武装は韓国をもっと安全にできるのだろうか? 独自核武装は、同盟の破綻を招きはしないにしても、在韓米軍が駐屯する名分は奪うだろう。韓国が在韓米軍の駐屯費用の全額を負担しない限り、核武装した韓国を守ってやるために在韓米軍を維持し続けようという主張が、ワシントンの政界で受け入れられる余地はない。韓国が独自の核武力で北朝鮮を抑止したいという発想は、米国の拡大抑止に対する不信に基づいたもので、拡大抑止の役割と信頼性が弱まることは避けられない。だとすると、在韓米軍がいなくなり、拡大抑止が弱体化して、韓米同盟が空洞化してでも、独自の核兵器さえ保有すれば韓国は今よりも安全になるのだろうか? 安全保障を米国に依存することを恥辱と考え、自主国防と戦時作戦統制権の韓国軍への早期移管を主権回復の課題としている勢力が、独自核武装を主張しているのであればおかしくはない。しかし、韓米同盟と拡大抑止が安全保障の根幹だと信じている勢力が核武装論に幻惑される現象は理解し難い。

 第二に、独自の核武力は対北抑止にどれほど効果があるのだろうか? 核には核が最善の抑止手段だということに異論はないが、北朝鮮の核使用を抑止する上で米国の核より韓国の核の方が大きな効果を発揮する理由は何か? 北朝鮮が、米国の5000基の核兵器より韓国の数百基の核兵器の方を恐れたり、米国が使用できないであろう核を韓国は必ず使用するはずだと信じたりするのであれば、独自核武装は対北抑止力を補強し得る。北朝鮮が米国の対北「敵対政策」に極度の恐怖心を示してきた理由は、米国には有事の際に通常型の武力だけでも北朝鮮の体制を終息させる力と意志がある、ということを疑っていないからだ。しかし、核武装した韓国を米国並みに恐れるだろうとは思えない。

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