寿命が尽きた韓国86世代運動圏政党、「親日打倒」は最後の抵抗スローガンだ【コラム】

経済が外国資本に収奪されたとする買弁資本論は「漢江の奇跡」を説明できず
文化大革命を称賛する『転換時代の論理』は2030世代(20-30代)の反中感情と乖離(かいり)
「1980年代の反日」でまとまる野党第1党と第2党
出自が異なる光復会と奇妙な協力

 1950年に6・25戦争が起こった時に中学3年生だったパク・ヒョンチェ氏はしばらくするとパルチザンに加わり、それから2年後に下山した。部隊長から「民衆のために学問をせよ」との指示を受けためで、この指示によりパク・ヒョンチ氏は後にソウル大学に進学し経済学を学んだという。パク・ヒョンチェ氏のパルチザンでの体験は中学校の後輩だった小説家の趙廷来(チョ・ジョンレ)氏の小説「太白山脈」で「少年戦士、チョ・ウォンジェ」の活躍を通じて描かれている。

 1980年に「ソウルの春」を迎えた大学のキャンパスではそれまで地下活動をしていたイデオロギー系のサークルが一斉に表に出てきたが、これらのサークルを通じて当時の新入生たちは「意識化の洗礼」を受けた。先輩たちが準備したテーマごとのカリキュラムに従いセミナーが開催された。経済分野であれば教材はパク・ヒョンチェ氏の『民族経済論』だった。「外国資本に依存する外延的(量的)成長から脱皮し、自己完結的な再生産構造を持つべきだ」というのがその核心テーマだった。1980年に大学に入学した筆者も先輩たちから「朴正煕(パク・チョンヒ)式の輸出主導型モデルは外国資本とその外国資本にへつらう財閥買弁資本だけが私腹を肥やし、国の経済を収奪している」「民族の利益を代弁する民族資本中心の経済構造に転換するべきだ」などの主張を一方的に注入され、文字通り洗脳教育を受けた。北朝鮮の金氏王朝が3代かけて実験し、宣伝してきた「主体経済」とこれらの思想はその基本的な考え方では一致している。この理論が正しければ、韓国経済は過去数十年にわたり外国資本と買弁資本だけに良い思いをさせ、最終的に崩壊してしまったはずだ。

 韓国の国内総生産(GDP)は1980年から昨年までに26倍にまで膨れ上がり、その規模は世界10位に近づいている。同じ期間に1人当たり国民所得も64位から33位に跳ね上がった。1980年代の運動圏(左派の市民学生運動勢力)たちが買弁資本などと非難し、嫌悪してきた財閥企業が韓国経済をけん引したからこそ可能だった。李秉喆(イ・ビョンチョル)、鄭周永(チョン・ジュヨン)、具仁会(ク・インフェ)、朴泰俊(パク・テジュン)など産業界の巨人たちのストーリーも今やユーチューブで数十万、数百万のアクセスを記録しているが、それらを視聴しているのは主に20-30代だという。かつてソウル大学の人気講座だった「マルクス経済学」は受講生が少なくなり、もう20年以上も前になくなった。1980年代の運動圏が信奉してきたこの経済理論は大韓民国が成し遂げた奇跡を説明できないのだ。

 李泳禧(リ・ヨンヒ)氏の著書『転換時代の論理』は1980年の大学新入生たちの世の中を見る目をひっくり返した。とりわけ「中共」「アカ」などと学んできた国の「本当?」の姿をこの本を通じて知り、大きな衝撃を受けた。著者は序文から「王様の裸の姿が見られなかった冷戦時代の古い視覚から脱皮せよ」と訴えた。運動圏たちは「現代史と国際政治の現実に対する見方に『コペルニクス的転換』をもたらした力作」と大きく称賛した。李泳禧氏は文化大革命を「人類史上初の人間意識改造革命」とたたえた。ところが後にその残酷な真相が世の中に知られるようになると、この本に対する評価は二分した。李泳禧氏は後にある対談集で「情報に接する環境が劣悪だったので、全体の真実を知ることができなかった」と自己正当化した。

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