文政権は国家統計も操作した。マンション価格指数だけで94回も改ざんし、5年間にわたり雇用・所得・不動産統計を歪曲(わいきょく)した疑いが監査院の調べで明らかになった。指示に従わない統計庁長を追い出し、そのポストに自分の味方を据えた。そうやって修正した偽りの統計を根拠として、文大統領は「(所得主導成長の)肯定効果は90%だ」とか「不動産(政策)には自信がある」という虚言を並べた。
民主党と祖国党が主張する基準が適用されるならば、文大統領の弾劾事由を満ちあふれていた。韓国国民が殺害されるのを放置し、北朝鮮に渡ろうとしたと決めつけた西海公務員射殺事件、エネルギーを巡る百年の大計を一夜にして覆した脱原発政策の暴走、問題がない原発を止めた月城原発1号機の経済性評価改ざんなど枚挙にいとまがない。国家の根本を乱すあらゆる疑惑の頂点に文大統領がいることは、誰が見ても明白だった。むしろ朴槿恵(パク・クンへ)元大統領の弾劾事由が大したこともないように見えるという声も上がった。
民主党は尹大統領を弾劾すべき理由として、海兵隊員事件の捜査介入を挙げる。文政権は曺国(チョ・グク)元法務部長官をかばうため、検察捜査チームを空中分解し、検察総長の職務まで停止させた。捜査介入どころか、全く捜査ができないように阻止した。民主党は尹大統領夫人である金建希(キム・ゴンヒ)氏を巡る問題も弾劾に値すると言っている。文大統領夫人の金正淑氏は大統領専用機でタージマハルに行き、現地の大統領不在のチェコ、エジプトのピラミッドを訪問し、税金で観光に行ったと物議を醸した。青瓦台の特別活動費と疑われる札束で服やアクセサリーを購入した疑惑も浮上した。どちらが重大なのか。
民主党などは日本に対する低姿勢外交も問題視している。それが弾劾事由ならば、中国に終末高高度防衛ミサイル(THAAD)を巡る「3つのノー」をひそかに約束したり、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)の一言でビラまきを禁止したりする対中・対北屈辱外交で一貫した文大統領は何度も弾劾されても足りないだろう。
民主党の基準に従えば、文政権の5年間には弾劾を政界で争点化する機会が数多かったが、当時野党は考えもしなかった。「朴槿恵弾劾」で血の味を占めた民主党の目には、野党は実にばか正直に見えたことだろう。
朴正薫(パク・チョンフン)論説室長