「ひとり酒場で 飲む酒は~♪」 韓国のテレビ番組で日本語の歌、「タブーの壁」が崩れた

 「ひとり酒場で 飲む酒は 別れ涙の 味がする」

 6月19日に放送されたTV朝鮮のバラエティー番組『ミスター・ロト』。歌手チン・ヘソンが渋い低音で歌うと、客席のあちこちから歓声が沸き上がり、涙ぐむ人もカメラにとらえられた。放送画面には日本語の歌詞と韓国語訳のテロップが表示された。この日、チン・ヘソンが歌った歌は日本の「国民的歌手」美空ひばり(1937-1989年)の『悲しい酒』(1966年)だった。韓国の人気歌手ナ・フナ(羅勲児)が2002年の韓日文化交流記念特別アルバムに収録したほど、韓国でも知られている歌だ。

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■韓国のテレビに登場した『ギンギラギンにさりげなく』

 この日の放送は、1980-90年代に日本でも人気を呼んだ演歌歌手キム・ヨンジャ(金蓮子)の後継者を発掘するというコンセプトだった。キム・ヨンジャは西城秀樹の1983年のヒット曲『ギャランドゥ』を熱唱するなど、50年の歌手人生で初めて、韓国の番組で日本語の歌を歌った。キム・ヨンジャは「『日本の大衆音楽の不毛の地』のように思われていた韓国の番組で新たな挑戦をするということで、感慨深かった」と語った。視聴者の反応も熱かった。放送後、インターネット・コミュニティー・サイトなどには「感性に心を奪われた」「新鮮だ」などのコメントが相次いで寄せられた。「日本の歌がなぜ放送されたんだ」といった反応はほとんど見られなかった。

 今年4月から1カ月間、MBNが放送したバラエティー番組『韓日歌王戦』では、日本人歌手たちが韓国の番組を舞台に大活躍した。日本代表として出場した住田愛子(16)が歌った、近藤真彦の1981年のヒット曲『ギンギラギンにさりげなく』は韓国のユーチューブで再生回数600万回を超え、大きな人気を呼んだ。

 2004年の日本文化全面開放以降、映画・アニメ・ゲーム・出版などさまざまな分野で日本の文化があふれたが、放送界では日本語の歌が「最後のタブー(禁忌)」のように考えられてきた。2018年にはアイドルオーディション番組『PRODUCE 48(プロデュース・フォーティーエイト)』で選抜された韓日合作アイドルグループIZ*ONE(アイズワン)の曲『好きになっちゃうだろう?』に「日本語の歌詞が一部入っている」という理由からKBSとSBSの放送審議を通過できず、放送不可と判定されたこともあった。しかし、今ではこのようなタブーは消えつつある。

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