「1日に1500億ウォン(約173億円)」――。韓国国会で国民年金改革案が処理されないために、毎日積み上がる国民負担だ。2055年には国民年金基金が底をつく。2093年までの累積赤字は、2京1656兆ウォンに達すると予想されている。
今年7月5日、与野党は現在9%の保険料率(所得ベースの納付額の料率)を13%に引き上げることで合意した。所得代替率(年金受給額が現役世代の平均手取り収入の何%に相当するかを示す指標)も44%とすることで妥協した。同案が国会を通過すれば、基金が払底する時点は9年先送りされ2064年となる。2093年までの累積赤字は3738兆ウォン減少する。しかし、国会が年金改革案を処理しないため、1年に約54兆ウォン、1日に1484億ウォンずつ赤字が膨らんでいるのだ。
年金改革が遅々として進まず、これまで蓄積した基金を消費する間、年金を取り巻く状況は急激に悪化している。韓国統計庁の「長期人口推計」によると、65歳以上の人口は来年初めて1000万人を突破する。それと同時に、韓国は65歳人口の割合が20%を超え、超高齢社会に入ることになる。一方、出生率は世界最低水準にまで低下。今年の年間合計特殊出生率は初めて0.6台に低下する可能性が示されている。韓国の0~4歳の人口は北朝鮮より少ない。こうした人口構造は年金財政をさらに悪化させている。また、国家財政に深刻な負担となるため、国際通貨基金(IMF)などは韓国経済の最優先課題として、年金改革を挙げるほどだ。国内外が韓国経済を脅かす最も大きな時限爆弾として「国民年金」問題を指摘しているのだ。
年金改革は労働、教育と共に、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が国政課題として掲げた三大改革の一つだ。国会改選前の国会会期終了直前、保険料率13%、所得代替率44%への調整案を優先処理しようという共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表の提案を大統領室は断った。「与野党が時間に追われて決定するのではなく、国民全体、特に青年世代の意見を十分に反映する必要がある」という理由だった。