米国の日刊紙ニューヨーク・ポストが6月20日、中国の企業・個人が近隣に農場を所有している米国内の軍事基地19カ所の位置を表示した地図を報じました。太平洋のハワイから南部フロリダに至るまで、あちこちの米軍基地の周辺で中国が農地を買い入れ、深刻な安全保障上の脅威要因として現れた-という主張でした。
これまで、中国の企業や個人の米軍基地周辺における農地買収問題を懸念する報道は何度かあり、米国議会には、これを禁止する法案も上程されています。ニューヨーク・ポスト紙は、こうした従来の報道と新たな情報を総合し、米軍基地周辺の中国資本による農地買収の実態についてまとめたのです。
地図を見ると、中国資本が所有する農場が近所にある米軍基地は、インド太平洋軍(INDOPACOM)司令部があるハワイのオアフ島から陸軍特殊作戦コマンド(ASOC)の所在地であるノースカロライナのフォート・リバティまで、膨大なものでした。ニューヨーク・ポスト紙は「中国は戦略的に軍事基地周辺の農場を買収し、農地に偽装した諜報(ちょうほう)基地を構築しようとした」と伝えました。
■レーダー、赤外線装備などで監視が可能
中国資本が所有する農場が付近にある19の米軍基地の中には、戦略的に重要なところが多数含まれています。ノースカロライナ州のフォート・リバティは統合特殊作戦コマンド(JSOC)、第18空挺(くうてい)軍団、第82空挺師団などが駐屯する基地で、「米軍空挺部隊と特殊部隊の揺籃(ようらん)」で通じる場所だといいます。
カリフォルニア州サンディエゴにあるキャンプ・ペンドルトンは米海兵隊第1海兵遠征軍(1MEF)司令部と第1海兵師団の駐屯地です。フロリダ州タンパのマクディール空軍基地は、中東を担当する米中央軍(CENTCOM)、特殊戦を総括する特殊作戦軍(SOCOM)などがいる場所です。
中国資本が所有する農場は、こうした部隊から数キロないし数十キロしか離れておらず、レーダーや赤外線装置、ドローン、盗聴や通信傍受装置などを利用すればたやすく米軍部隊を監視できる、というのが軍事専門家らの判断です。駐中大使館の武官を務めたことがあるロバート・スポルディング元空軍准将は、ニューヨーク・ポスト紙のインタビューで「中国所有の農地は戦略的な拠点部隊に近く、情報収集基地として利用される恐れがあることが問題」だとし「米国にこうした土地買収を防ぐ法律がないというのは驚くべきこと」と述べました。
ある軍事セキュリティーの専門家は、米軍部隊の周辺には部隊の動向に関する情報が広く存在する、と語りました。酒場で米兵たちがしゃべっている内容や輸送機の離着陸の頻度などを調べるだけでも、部隊の動向を容易に把握できるのです。