Kさんは「大企業でも厳しいのに、会社員を主要顧客とする自営業がうまくいくはずはないというムードが広がり、起業自体考えもしなくなっている。IT分野の起業も20~30代の社員が中心で、40~50代は万年次長・部長のままでも定年を迎えようという人が多い」と話した。50代の銀行員は「年齢的には遅いが、銀行に残って頑張ることの方が外部で生き残るためにもがくよりはましかもしれない」と語った。
「自営業の社長」という選択肢を捨てた50代は、万年次長の身分を受け入れて職場で耐え忍ぶ。最近ある流通大手が希望退職を募集したが、応募者が数十人にとどまったという。この企業の社員は「1980年前後生まれの部門長が誕生しても昇進できなかった1970年代生まれの人が以前のようには辞めずに持ちこたえている。店舗の整理整頓担当に異動しても、子どもたちが幼く、『会社を出たところでこれといった手もない』という理由で適応して過ごす人が多い」と話した。
■銀行の希望退職、大幅に減少
銀行業界はモバイル金融の拡大で実店舗を減らそうと、多額の退職金で希望退職を募ってきたが、希望退職ブームは去りつつある。KB国民、新韓、ハナ、ウリィの韓国4大銀行における今年上半期(1~6月)の希望退職人員は1496人で、昨年上半期(1729人)に比べ13.5%(233人)減少した。ある市中銀行の次長は「毎月通帳に入金される数百万ウォンの月給は数億ウォンの退職金より安心感があると考えるベテラン行員が多い」と話した。別の市中銀行のチーム長級行員(50代)は「50代後半に賃金ピーク制が適用され、月給が半分になっても残る行員が多い。遅い年齢で子供を持つケースが増え、50代になっても中高生の子どもを持つ人が多いが、子どもが成長する時までは銀行員の肩書きでいることを好む傾向もある」と説明した。
■退職しても企業ではなく転職
1962年生まれのBさんは、5年以上大企業で「部長待遇」の生活をしていたが、2022年に定年退職した。同期や後輩がチーム長を経て、早い人で40代半ばから役員に昇進する中、Aさんは一度もチーム長になることができず、職級だけが部長待遇となった。会社では2年分の賃金を条件に希望退職の募集があったが、会社を離れなかった。Bさんの会社の後輩である40代の社員は「多額の退職金を十分な準備がない起業で一気に使い果たすよりは、安定した月給を受け取り、定年まで働く方がよいという『ロールモデル』を教えてくれた先輩だ」と述べた。
職場で行き詰まっても、起業せずに他の職場でサラリーマン生活を続ける人も多い。あるファッション会社の人事担当チーム長(44)は「10~20年前までは万年部長・次長らが辞め、卸売業を営んだり、ショップを構えたりするケースが多かったが、最近は小さなブランドや新興ブランドに移籍し、ノウハウを伝授しながら、サラリーマン生活を続けようとしている」と指摘した。
鄭錫愚(チョン・ソクウ)記者、金智燮(キム・ジソプ)記者