金正恩総書記は今年に入って金日成・金正日の遺体が安置されている錦寿山太陽宮殿に1回も参拝していない。昨年末と今年の初めには反統一宣言を行い、先代の遺訓である「祖国統一路線」を電撃的に破棄した。また金日成・金正日の共同遺産のシンボルである「祖国統一三大憲章記念塔」も「首都平壌南側関門をぶざまにしている」として撤去を指示した。韓国統一研究院の洪珉(ホン・ミン) 先任研究委員は「金正恩執権12年のうち2017年までの5年間は先代の継承を強調する時期だったが、昨年末から今年にかけては『敵対的2国家論』など大胆な政策転換により先代との差別化を本格化させている」と指摘した。
これは28歳で権力を握った金正恩総書記の「若い指導者コンプレックス」の反映との見方もある。ある韓国政府筋は「金正恩総書記は後継者となる十分な準備期間がない状態で、父親である金正日の突然の死亡により若くして権力を握った。そのため権力基盤の不安定さから来るコンプレックスを克服できていない様子がたまに見られる」との見方を示した。この政府筋はさらに「核やミサイル技術の高度化にも過度な意味合いを付与し、自らの祖父や父よりもさらに素晴らしい指導者であることを強調したいようだ」とも説明した。
金正恩総書記は権力を握った初期には祖父を連想させる姿を演出して統治を行った。金日成主席の激情的なジェスチャーをまねながら、つえや麦わら帽子など金日成主席を連想させる小物もよく手にしていた。しかし金日成主席と金正恩総書記の2人だけの写真は公開できなかった。金日成主席は生前、在日出身のダンサーだった妻を通じて生まれた金正恩総書記の存在を正式に認めなかったためとみられる。ある北朝鮮専門家は「出生の背景も金正恩総書記のコンプレックスを形成する要因だったのだろう」と指摘する。
専門家は金正恩独裁体制をさらに強化する制度整備やそれに伴う動きが今後も続くと予想している。北朝鮮は金正恩総書記執権後、党大会をはじめとする党の会議体で、憲法よりも上位の概念となる朝鮮労働党規約に「金日成・金正日主義」を新たな指導理念として明文化し、これを党の最高綱領であることを明確にした。金正恩総書記執権12年目の40歳で開催される今回の全員会議を契機に、今後「金正恩主義」が党の規約に追加される可能性も考えられる。
キム・ミンソ記者