佐藤さんが一人暮らしをしている賃貸マンションには、ほこりが一つもなかった。佐藤さんは「毎日一人で3食の食事を準備し、お皿洗いをして掃除もする」と言う。また「家族と暮らす70、80代の老人たちを見ると、家族が何でも代わりにしてくれるので、本人は動かなくなり、すぐに衰弱する」とし「私は一人で全部しなければならないため、ずっと動いている。だから健康なのではないか」と話した。2時間ほどインタビューをしている間も、佐藤さんは休む間もなく話をし、お菓子を出しては写真や雑誌を見せるなど、絶えず動いていた。
-94歳の佐藤さんにとって人生とは。
「81歳で東日本大震災に遭った。この時、人生についてじっくりと考え直した。当時(津波で)親戚だけで7人が亡くなった。めいも亡くなったため、何かしてあげたかった。生地を縫って人形を作って死んだめいの母親にあげたら、わんわんと泣いていた。人形を娘と思ったのだ。その後はずっと人形を作っては周囲に配っている。『他の人と共に生きること』、それ自体が人生だ。楽しい。周りの人々ともいつも楽しく暮らしている。だから今後私が亡くなっても、どうか孤独死とは書かないでほしい。どうして、これが孤独死なのか。
1945年、第2次世界大戦の爆撃で焼け野原となった東京を見た。大きな鍋に草がゆを作ってお皿に分けて食べた。『生きること』の壮絶さを目の当たりにし、生きることの尊さも同時に学んだ」
-一日の日課は。
「毎朝6時に起きる。寝床を片付けて朝食をあらかじめ準備し、6時半にNHKラジオに合わせて『ラジオ体操』をする。朝食をゆっくりと食べて、NHKの朝ドラを必ず見ている。9時30分からは人形作りを始める。家の片付けは毎日やっている。2、3日に1回は掃除機もかける。食事は毎日3食を自分で作って食べているが、かなりの量を食べている(笑)。毎週2回買い物をしているが、そのたびに野菜をたくさん買っている。朝はご飯にスープ、魚と肉を食べ、納豆も食べる。夜は11時ごろ寝ている。寝る直前の夜10時ごろ、入浴しながら水中で500回ずつ蹴っている」