文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の娘ダヘ氏家族によるタイ移住を支援した疑惑が持たれている中小ベンチャー企業振興公団の元バンコクセンター長A氏はこのほど、本紙の電話インタビューに応じ、「当時会社ではバンコクで家を探している人物がダヘ氏だという事実を誰も教えてくれなかった」と証言した。A氏は不動産業者を紹介し、家の契約が完了した後もバンコクに引っ越してくる人物が誰なのか知らなかったという。
A氏は「2018年5月ごろ、本社で海外組織を管理する部署の担当者が『処長の知人がバンコクで住む場所を探している。不動産を調べてほしい』と求めてきたため、バンコク現地の韓国人不動産業者B氏の連絡先を本社に伝えた。その時、家を探していた人物がダヘ氏だという事実は最近知った」と話した。また、「移住しようとしている人物の名前と連絡先を尋ねたが、本社担当者も『処長の知人』が誰なのか知らないようだった。後日B氏から『一人の女性が家を下見し、契約も済ませた』という連絡だけを受けた」と振り返った。
本紙の取材を総合すると、A氏は先月、文前大統領の元娘婿S氏のタイイースタージェット特例採用疑惑を捜査している全州地検に出頭し、事情聴取を受けた。その際、不動産業者B氏も聴取を受けた。検察はA氏に電話した中小ベンチャー企業振興公団の職員と処長、指示を出した上層部について調べを進めているという。検察は当時理事長だった李相稷(イ・サンジク)元民主党議員が中小ベンチャー企業振興公団の職員を使い、秘密裏にダヘ氏家族のタイへの移住を支援したとみている。部長検事出身の弁護士は「中小企業を支援する政府系機関の職員を私的に動員したこと自体に法令違反の可能性がある」と話した。
一方、S氏を採用したタイイースタージェットのパク・ソクホ代表は「李相稷理事長(元議員)が直接(S氏の)履歴書をタイまで持ってきて採用を指示し、『月給は800万ウォン(約92万円)にしてくれ』と言った。S氏が大統領の婿だとは明かさなかった」と話している。タイイースタージェットは李元議員が実際に所有していたタイの格安航空会社でダヘ氏の家族に2億ウォン以上の便宜供与を行った疑惑が持たれている。
2018年6月から7月にかけ、文前大統領の元娘婿であるS氏のタイイースタージェット就職と娘のダヘ氏家族のタイ移住はあたかも「秘密作戦」のように進行されたとみられる。同年3月、中小ベンチャー企業振興公団理事長に任命された李相稷元議員が直接乗り出し、3カ月で海外就職と移住などが一気に行われた。
S氏は同年3月、勤めていたゲーム会社を辞めた。4月には自分の名義になっていたソウル市鍾路区旧基洞の住宅をダヘ氏に贈与した。この物件は3カ月後に売却されたが、夫婦間で贈与が行われた理由は明らかになっていなかった。