「北を称賛」と物議を醸した平壌演説巡り文在寅前大統領「民族の自尊心・不屈の勇気という表現は私が入れた」(下)

■北朝鮮はハノイ決裂後、露骨に文大統領を非難

 同じころ、北朝鮮外務省は「南朝鮮は、間抜けが水を飲んでげっぷをするように、非核化という出まかせは放り出してしまえ」と言っています。張金哲(チャン・グムチョル)統一戦線部長は「青瓦台が危機を免れようとして頭をひねっているが、信頼は木っ端みじんになった。(文在寅政権が)無力で無能だったから、北南関係がこの様相、このありさまになったのだ。これから流れる時間は、南朝鮮当局において本当に悔いが残り、辛いものになる」と主張しました。

 その後も北朝鮮の金正恩政権は、自分たちを忠実に代弁してきた文大統領を「ゆでた牛の頭」などの表現を用いて非難してきました。2020年に金正恩の妹・金与正(キム・ヨジョン)が行った非難は最も強硬です。「鉄面皮の口車」「厚かましさと醜悪さ」「正義のふり、ありとあらゆる良さそうなふりをしながら平和の使徒であるかのように振る舞い、むしずが走って見ていられない」と言いました。

 国家安保戦略研究院の劉性玉(ユ・ソンオク)理事長は、北朝鮮が態度を180度変えて文・前大統領を非難している背景をこのように分析しました。「(文・前大統領は)北朝鮮に過度の期待を抱かせた。文在寅政権の人々は、私的な席で『われわれは米国の顔色をうかがわない。わが民族同士でやる。金剛山観光・開城工業団地を再開するつもり』と(北朝鮮側に)豪語したが、現実的には不可能だった。ハノイ会談前、国家情報院(韓国の情報機関)の実力者A氏が北朝鮮側の関係者と会って『寧辺の核施設さえ閉鎖すれば制裁が解ける』と言質を与えた。首脳会談でその条件を提示したら、トランプは交渉を蹴ってしまった。金正恩は文政権のほらで詐欺に遭ったと思っているのだ」

 金正恩は文・前大統領から詐欺に遭ったと思い、その後は露骨な非難をして「相手にするつもりはない」という意志をはっきりさせましたが、今回の回顧録が起こした波紋を見ると、文・前大統領はまだそんな金正恩政権にかなり未練があるようです。

李河遠(イ・ハウォン)外交担当エディター

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  • ▲2018年9月19日、当時の文在寅大統領が金正淑夫人と共に、平壌の綾羅島5・1競技場に入場してあいさつしている。/聯合ニュース

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