「北を称賛」と物議を醸した平壌演説巡り文在寅前大統領「民族の自尊心・不屈の勇気という表現は私が入れた」(下)

■経済制裁を受けている北朝鮮を激励したかったという文・前大統領

 文・前大統領はこれについて「北朝鮮が経済制裁を経験する中で直面しているさまざまな困難と、それに打ち勝つための努力を激励したかった」とし「だから『困難な時節』『民族の自尊心』『不屈の勇気』といった表現を、私が直接入れた」と書きました。また「われわれのメッセージは非核化、核のない韓半島であって、平壌市民に感性的にアプローチしたかった。感性的な表現の中で、平壌市民の困難を韓国側がよく理解していると激励する部分は、韓国の保守層は不満に感じるかもしれないが、私は当然言うべきだと思って、押し切って言った」と述べました。

 文・前大統領が回顧録で「押し切って言った」と表現したのは、青瓦台(当時の韓国大統領府)の一部でも5・1競技場演説文の問題点を認識して反対したけれど、文・前大統領が強行したことを示唆しています。その結果、金正恩が平壌住民15万人を集めた場所で「戦略的歓待」の雰囲気に酔い、大韓民国大統領が金正恩全体主義を称賛したと読める演説を行ってしまったのです。北朝鮮で十分に食べることもできず、人間として基本的な生活すらできず、体制の変化を渇望している住民は、文・前大統領の演説を伝え聞いて何を思ったでしょうか。

 当時の文大統領はこのように心を込めましたが、金正恩との雪解けの日々は長くは続きませんでした。北朝鮮は、韓半島情勢が自分たちの思い通りに進展しないことから、文大統領を強く批判しだします。その中でも圧巻は2020年6月、平壌・玉流館厨房(ちゅうぼう)長を登場させて露骨に非難したことです。文大統領は2018年9月の北朝鮮訪問当時、玉流館での歓迎昼食会の際、平壌冷麵を食べました。金正恩は同年4月、彼の最初の南北首脳会談場に玉流館の平壌冷麵を持ってきていました。これを覚えていて、北朝鮮はその玉流館厨房長を登場させて「平壌に来て玉流館のククスを食べるときは、何か大きなことでもやるかのように怪しげに振る舞って、戻ってからは今まで全く何もしてない」と主張しました。韓国大統領を、一介の料理人を登場させて非難したんですね。

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  • ▲2018年9月19日、当時の文在寅大統領が金正淑夫人と共に、平壌の綾羅島5・1競技場に入場してあいさつしている。/聯合ニュース

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