フィリピンの静かな地方都市「バンバン」が突如として注目を集めている。首都マニラの北方に位置するバンバンは、稲作農業を主とする小さな地方都市だ。フィリピンに住む韓国系の人々もあまり訪れることはないという。
バンバンが注目を集めるきっかけとなったのは、35歳のアリス・グォ市長に向けられたある疑惑だ。グォ市長はロングヘアをなびかせて公の場でピンク色の服を好んで着るなど、従来の政治家とはかけ離れた姿を見せてきた。常に大きな眼鏡をかけ、ほほ笑みをたたえた顔は信頼感を与えた。さらに、外国人なまりのないタガログ語を現地人らしく話し「自分の足で駆け回る若い政治家」のイメージを築いてきた。そのようなグォ市長に「中国のスパイ」疑惑が浮上し、フィリピン全土の注目が集まっているのだ。
英国BBCが19日(現地時間)に報じたところによると、今月初めにグォ市長はフィリピン上院の聴聞会に呼ばれたが、それまでグォ市長の過去について誰も大きな関心を抱いていなかった。
事の発端は今年3月、当局がバンバンにあるオンラインカジノの施設を摘発したことだった。当局の調べによると、この施設は『ロマンス詐欺』の犯行拠点だったことが分かった。施設には数百人が監禁されており、その数百人が(ネット上で)異性に接近し、カネをだまし取るという犯行を繰り返していた。当局はこの施設から中国人202人とその他の外国人73人を含む約700人を救出した。
現地で「Pogo」と呼ばれるオンラインカジノ施設の客は、主に中国人だった。ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領の在任期間中は、同大統領が中国と緊密な関係を築いていたためカジノも繁盛していたという。ところが、マルコス大統領が就任すると、南シナ海の領有権問題をめぐって中国との間で緊張が高まり、Pogoも厳しい調査を受けた。
今回摘発されたバンバンの「Pogo」は、グォ市長のオフィスのすぐ裏にあった。およそ8ヘクタールに達する敷地には、食料品店、倉庫、プール、ワインセラーまであった。スタッフらはコンピューターが並んだテーブルで詐欺の犯行に及んでいた。
この敷地の半分を、グォ市長が所有していることが分かった。残りの半分は2年前にグォ氏が市長選挙に出馬した際に売ったという。グォ市長は自身の名前で登録されたヘリコプターも保有していたが、土地と同様にかなり前に売却したと主張した。