中国のレアアース業界を代表する大手国有企業の業績がさえません。レアアースの国際価格下落によって、昨年の売上高と純利益が大幅に減少したのに続き、今年第1四半期(1~3月)には相次いで赤字を計上しました。最大手の中国北方稀土(集団)高科技(北方稀土)は5200万元(11億円)の黒字でしたが、黒字幅が昨年第1四半期と比べ94.4%も縮小しました。
【写真】江西省のレアアース企業を視察する習近平国家主席(2019年5月)
レアアースは独特の化学・電気的特性を持つ17種類の元素の総称で、先端産業の重要素材です。電気自動車(EV)や風力発電機、ジェットエンジン、LEDディスプレーの製造などに幅広く使われます。戦闘機やミサイルなどを作るのにも欠かせない戦略物資です。
中国は全世界の供給量の70%を占めるレアアース大国で、これまでレアアースを経済報復の手段として活用してきました。2010年の尖閣諸島(中国名・釣魚島)紛争当時、日本へのレアアースの輸出を禁止したのが始まりでした。米国が中国の華為(ファーウェイ)を制裁すると、「米国へのレアアース輸出を規制する」という脅しもかけました。
■昨年だけで30~40%下落
中国がレアアースを武器化すると、米国、日本、オーストラリアなどは東南アジア地域でのレアアース生産を増やし、独自の精錬工場を稼働するなど、独自のレアアース供給網の構築を本格化しました。その結果、レアアースの供給が増え、国際価格が下がり、中国のレアアース企業が一斉に損失を出したのです。
中国のレアアース業界を代表する中国稀土集団資源科技は、昨年の売上高が5.4%減、純利益が45.7%減となりました。今年第1四半期には2億8900万元の赤字を出しました。最大のサプライヤーである北方稀土も昨年の売上高が10%減少、純利益が60%減だったと発表しました。 大手5社の一角である盛和資源も昨年の純利益が80%減となり、今年第1四半期には2億1600万元の赤字を記録しました。
中国のレアアース業界の業績悪化は、レアアースの国際価格下落が最も大きな要因です。昨年レアアースの国際価格は元素別に30~40%下落しました。EV用永久磁石に使われるネオジムは、昨年末の価格が年初に比べて40.4%下落しました。
■ミャンマーなどのレアアース生産急増
米地質調査所(USGS)の資料によれば、昨年の世界のレアアース供給量は35万トンで、2022年(30万トン)に比べ16.7%増えました。ミャンマーが1万2000トンから3万8000トンへと216%増加し、中国も21万トンから24万トンへと14.3%増えました。米国も4万2000トンから4万3000トンへと小幅ながら増加しました。