だが、保守か革新かによって、6つの基盤の加重値は明らかに異なる。保守は6つの基盤全てを重視するが、進歩は主にうち3つの基準に敏感だ。革新は配慮・被害の基盤と自由・圧制の基盤に最も依存し、公平性・不当性の基盤も働かせる。例えば、左派は右派に比べて相対的に暴力と苦痛のシグナルをより敏感に受け入れるため、平等のために闘争しなければならないと信じる。また、弱者が強者に抑圧されないように政府が取り組むべきだと主張する。一方、右派も自由を強調するが、彼らは革新政権の政策に苛立つことが多い。なぜならそうした政策が特定の弱者集団(労働者、消費者、環境)を保護するかと思えば、他の集団(例えば中小企業の事業主)を圧制するためだ。公平性・不当性の基盤においても、右派は相対的に「最も熱心に仕事をした人に最も多くの報酬を得るべきだ」という比例の原則を金科玉条のように受け入れる。
そして、革新と保守を分ける決定的な基準は、忠誠心、権威、高貴さの基盤だ。実際これは個人的レベルではなく集団的性格を持つ。革新はこれら3つの集団的な基盤に非常に鈍感だ。例えば、上記の太極旗雑巾の例を保守主義者が不快に感じる理由は、それが忠誠心の基盤に反するためだ。右派は共同体を壊してまでも理念を守りたくないのに対し、左派は弱者を保護するためなら、内部で銃を撃ち合っても問題にならない。
ここですぐに質問してはならない問題がある。「右派と左派のうち、どちらがより正しい道徳基盤を持っているのか」――。この問いだけを投げ掛け続ける陣営は「究極的」に失敗する確率が高い。なぜなら人間がどんな方法で道徳判断を行い、人々がある道徳基盤をなぜ重視するのかに対する敏感さがなければ、相手を説得できないためだ。そうした議論がなければ、なぜ地方の住民と労働階層が自分たちの利益を代弁してくれそうな革新側に立たず、保守に投票するのかを到底理解できない。どちらの陣営を標榜しても、共同体基盤の道徳資本を重視しない政治勢力は勝てない。
総選挙は終わったが、政治的対立は新たに始まるだろう。勝利しようが失敗しようが、これからは政治工学的分析を超越し、国民の道徳的直観を深く探求すべき時だ。
チャン・デイク嘉泉大創業学部碩座教授(進化学)