これについて、民主党は「逃亡目的の出国だ」と主張している。ハンギョレ新聞は17日、「李大使が資料回収当時、大統領室の内線番号による電話を受けた」という趣旨の報道を行った。李大使は同日、KBSのインタビューに対し、「公捜処が出頭を命じれば、あすにでも帰国する」と表明した。
大統領室は公捜処が出頭を命じなければ、李大使を帰国させることはできないとの立場だ。大統領室は「公捜処が出頭を命じてもいない状態で在外公館長が帰国して待機するのは非常に不適切だ」と指摘した。公捜処は李大使の再出頭の日程については明らかにしていない。李大使の弁護人は19日午後、公捜処を訪れ、「事情聴取の期日を早く決めてほしい」という要望書を提出した。
■野党「尹錫悦ゲートだ」法曹界「職権乱用に当たらず」
民主党は19日、「今回の事件は最初から本丸が尹錫悦大統領の『尹錫悦ゲート』だ」と主張した。民主党の金民錫(キム・ミンソク)総選挙状況室長は同日、「大統領の激怒が背景になり、(チェ上等兵氏死亡事件の)捜査結果が覆され、大統領は捜査対象の人物を駐豪特任大使に任命し、法務部は急いで出国禁止を解除して被疑者を出国させた」と批判した。
司法関係者の多くは「指摘された疑惑の内容からみて、李大使の資料回収が職権乱用と認められるのは困難ではないか」との意見だ。職権乱用罪が成立するためには、職務権限を持つ公職者がその権限を乱用し、他人に義務以外のことをさせるか、権利行使を妨害した事実が求められる。
ある司法関係者は「海兵隊捜査団が警察に提出した調査資料を李大使が回収させたことは国防部長官の権限行使と見なすことができる」とした上で、「海兵隊捜査団の捜査を妨害したのならば職権乱用が成立するが、チェ上等兵の死亡に関する捜査権は海兵隊捜査団ではなく警察にある。資料回収を義務以外のことをさせたと見なすことは難しい」との認識を示した。別の司法関係者は「チェ上等兵死亡の経緯に関する警察の捜査が進んでいることも、李大使が他人の権利行使を妨害してはいないことを示していると見なすべきだ」と述べた。
さらに別の司法関係者は「李大使の職権乱用が認められないならば、大統領室も同じだ。大統領室関係者が資料回収に関連し、李大使に電話したとしても職権乱用には当たらない可能性が高い」と述べた。捜査権のない海兵隊捜査団が海兵隊第1師団長などに業務上過失致死容疑を適用すべきだとして、事実上捜査の結論を下し、警察に送ったこと自体が越権行為だという指摘もある。
法曹界の一部からは、公捜処が李大使らを職権乱用の罪で起訴し、裁判所の判断を仰ごうとするのではないかとする見方も出ている。
イ・スルビ記者