22年7月、SKハイニックスを退職したA氏は、1年も経たないうちにマイクロンの役員へと転職した。退職時には「2年間はマイクロンなど競合業者に就職してはならない」という転職禁止約定書と秘密維持誓約書を取り交わした。誓約書によると、A氏は今年7月24日までマイクロンに就職することはできない。後からA氏の転職を確認したSKハイニックスは昨年8月、転職禁止の仮処分を申し立てた。半導体業界は裁判所による今回の決定がこれまでのケースより厳しい内容だと受け止めている。これまで転職禁止の仮処分申請は職業の自由を理由として、転職禁止期間が残り1年以下であれば棄却される場合が多く、認められても1日200万~500万ウォンの支払いが命じられていた。半導体業界関係者は「技術流出問題が企業競争力に関わる問題として浮上し、裁判所が事態の深刻さを認識した」と話した。
半導体が世界各国の国家戦略資産となり、技術流出漏えいも半導体分野に集中している。2019年から昨年までに起きた海外への技術流出96件のうち、半導体は38件で、全体の約40%に達する。過去の技術流出先は大半が中国だったが、今回の事件のように、国に関係なくさまざまな方面に拡大しつつある。1998年にサムスン電子に入社し、DRAM設計を担当してきたB氏が2022年3月に退職後、マイクロン日本支社に入社した事例が代表的だ。当時、裁判所は転職禁止の仮処分申請を認め、違反時に1日500万ウォンの支払いを命じた。
半導体業界は現在の制度では技術流出を防ぐことは容易ではないと指摘する。企業は退職者が転職した事実を把握することが困難で、転職禁止の仮処分を申し立てても、当事者が海外にいるなどの問題で決定が出るまでに1年近くかかるためだ。技術とノウハウの移転には十分な時間だ。2021年に産業技術保護法違反で起訴された事件の一審33件のうち、無罪と執行猶予が判決全体の87.8%に達するほど処罰も軽い。
ファン・ギュラク記者、柳智漢(ユ・ジハン)記者