既に水はこぼれてしまった。鍵となるのは、こぼれた水をどうやってすくい、元に戻すかということだ。どのみち全てをすくい上げることはできない。それでも、後遺症を最低限にとどめるために努力すべきだ。今、代表の外では下剋上の当事者たちを巡って先輩支持派と後輩支持派に世論が分かれ、互いに攻撃し合って収拾がつかなくなっている。
こうした状況を放置しているうちに、韓国サッカーを支える根幹が揺らぐという事態にもなりかねない。それを望む人間はいないはずだ。何としてでもこの混乱を早急に収拾して傷を早く治し、再び素晴らしい代表チームをつくり上げることが重要だ。サッカーが与えてくれる成就感を、以前のように大勢の韓国国民が楽しめるようにすべきだ。普段サッカーに興味があるのかも怪しい一部の政治家までああだこうだと口を挟んでくる光景など、はっきり言って見たくない。
そういう意味でもサッカー協会は早く目を覚ますべきだ。現在、この問題を巡ってありとあらゆるニュースやうわさが乱舞しているが、これを傍観しているのは無責任だ。あの下剋上の現場にはサッカー協会のスタッフがいた。衝突を見た人間も1人や2人ではないはずだ。どんなことがあって誰が誤っていたのか正確に調査し、問責が必要であれば適正な形で断行し、過ちを犯した選手は自粛させ、反省の機会を与えるべきだ。うやむやにしたまま引きずるべき問題ではない。長引けば長引くほど傷が深くなるだけだ。
大韓サッカー協会の鄭夢奎(チョン・モンギュ)会長は「(誰が悪かったのか調査するうちに)傷口をえぐり、悪化させる恐れがある」として「傷を十分に治療できるよう支援していただけるとありがたい」と述べた。もっともな言葉だ。その治癒と復元のために、現段階で協会は何かしているのだろうか。触れないようにしたところで自然に癒えるものではない。適切なタイミングで治療しなければ、ゴールデンタイムを逃すことになる。
代表チームはこのような落ち着かない雰囲気のまま、約1カ月後にW杯予選でタイ(FIFA〈国際サッカー連盟〉ランキング101位)と戦わなければならない。通常なら苦戦するような相手ではないが、今の雰囲気では勝利を楽観することはできない。タイもアジアカップで善戦した。1勝2分けで決勝トーナメントに進出し、グループリーグではサウジアラビアと0-0で引き分けた。サウジは韓国と1-1で勝負がつかず、最終的にPK戦で韓国に敗れたチームだ。
協会の1年の予算は、国家代表のスポンサー企業からの後援金と、試合の収益635億ウォン=約71億円)、そして政府による直接・間接的な支援(333億ウォン)など、全て外部からの収入でまかなわれる。国家代表と政府支援がなければ組織を運営することもできない。もっと責任を重く受け止めるべきだ。真剣に事態を解決するために、もっと必死で駆け回るべきだ。
イ・ウィジェ記者