「陰謀論」の震源を明らかにしようとすれば、「その事件で誰が得をするのか」を見極めるのが早道だ。選挙を控えた時期に起きた襲撃事件で最も恩恵を受けるのは、同情世論が沸き起こった李代表本人と民主党だ。つまり、民主党が陰謀論を提起することは、受恵者が陰謀論者を名乗るようなものであり、自分の手で自分の目を刺すような自己矛盾と言える。
次に李代表による「自作自演説」を検討しよう。「李代表本人、そして彼と手を組んだ一部勢力が自作自演した」という陰謀論がユーチューブを中心に広がった。凶器を左手に隠し、右手で紙に隠した割り箸を使い、首を刺すふりをしたという推定と現場状況に頼った疑惑提起だった。サラミソーセージのように細かく切り取った現場映像分析資料のほか、匿名で音声を変えたソウル大病院の医師を名乗る人物の「証言」まであった。
その上で高度な訓練を受け、事前練習まで行った犯人が李代表の命を危険にさらすことなく、大きな傷もつけずに騒ぎだけを起こすショーを演出したのではないかというニュアンスを漂わせた。「命を失わない自作自演襲撃事件」という仮定は最大の受益者が李代表本人であるという前提があったために興味深いものだった。形勢を逆転する同情論を自分たちで呼び起こそうとしようとしたのではないか、と一時はもっともらしく聞こえたはずだ。
しかし、私は音声を変えた匿名医師の話よりも実名と顔を公開したソウル大病院の執刀医を信じる。自作自演を実現するためには、襲撃現場と李代表の傷を直接調べた救急隊員や警察官数十人、釜山大病院の医療スタッフ数十人、ソウル大病院の医療スタッフ数十人、彼らを取材した現場記者数百人を「100%」抱き込むか、だませなければならない。そんなことは不可能だ。陰謀論者は4カ所の現場にいなかった人々だ。
最も重要な現場証言は李在明代表本人だ。本人が証言して説明すればいい。国民がこれ以上消耗的な陰謀論に巻き込まれないように、最も迅速に論争に終止符を打てるのは李代表しかいない。
キム・グァンイル記者