韓国人が自ら考える大韓民国は変化に対する適応力に優れ、技術に対する前向きな受け入れ姿勢が整った国だ。インフラが整っており、バランスの取れた産業構造を土台に創意性と卓越した文化的感覚に基づいた新しいコンテンツが絶えずあふれる国だ。大多数の国民は自らを勤勉だと考えている。勤勉さと誠実さで奇跡の経済成長を達成し、先進国になったと満足している。欧米を訪れると、サービスの遅さがもどかしい。貧しいが楽天的な南欧や南米の国を訪れれば、「もっと勤勉ならば豊かに暮らせるのに」と残念がる。政治に対する不満が多いものの、ここまで大韓民国の変化とその過程に対する自負も強い。
ところが、現実は我々の考えとは異なり、いつからかさまざまな分野で後れを取る国になりつつある。最高時速300キロの高速鉄道が開通して20年になるが、平均速度は168キロにとどまっている。一方、中国の高速鉄道は平均時速350キロで営業運転しており、日本は時速500キロで走るリニアモーターカーの中央新幹線で東京~名古屋~大阪を1時間で結ぶ工事を進めている。こうした状況で、韓国は10兆ウォン(約1兆1000億円)をかけ、大邱と光州を結ぶタルピッ鉄道の建設を妥当性の事前検討なしに進めようとしている。
韓国人は住民登録番号で効率的な行政が行われていると考えているが、我々の住民登録証は何の情報も含まないプラスチック片にすぎない。韓国に比べて個人情報にはるかに敏感で保守的だとされる欧州のドイツ、オランダなどではさまざまな情報を含みながらもセキュリティー機能を備えた電子身分証を導入している。グーグルマップ、アップルペイ、ウーバーのような世界の標準的なサービスの多くは韓国では使えない。韓国人は日本をガラパゴスだと笑うが、それに劣る状況が続いていることを我々は知らない。オランダのセキュリティー企業サーフシャークが毎年110カ国を対象に調査している「デジタル生活指数(DQL)」で韓国は2021年の2位から22年は10位、2023年には20位に転落した。アジアでもシンガポールだけでなく、日本にも後れを取っている。我々が誇っていたインターネットの品質は日本が25位だったのに対し、韓国は64位だった。電子政府分野で世界4位に入り、メンツを保っているが、最近トラブルが相次いでおり、それさえも見通しは暗い。未来は人工知能(AI)の時代だと言われるが、そのために必要なデータの品質は粗悪で断片化している。韓国が過去の成果と栄光に酔っている間に着実に基盤を整え変化を続けた国々が韓国を追い抜いているのだ。