原子力は巨大エネルギーだからいっそう権力集中的であって、いっそう陰謀的だというのも、認識が混乱している。不正によって捜査を受けている安眠島の太陽光発電の場合、100万坪(330平方メートル)という巨大な敷地を太陽光発電パネルがぎっしり埋めている。ゼネラル・エレクトリックの12メガワット海上風力発電機の高さは63ビル(250メートル)を上回る。こうした太陽光・風力の巨大団地から消費者のところまで電気を移送するには、広大な遠隔送電網を備えなければならない。これらが分散的で、牧歌的で、自然型のエネルギーだという根拠は何か。
2030NDC(温室効果ガス40%削減)や2050カーボンニュートラルは、実現可能性は度外視してコンピューターで到達ルートをさっと取り出したサイエンス・フィクションに近い。著名なエネルギー学者のバーツラフ・シュミルによると、ドイツは脱原発、新再生拡大のエネルギー転換を20年間押し進めてきたが、化石燃料の比率は84%から78%に下がっただけだった。中国の都市100世帯当たりの自動車の台数は、1999年の0.34台から、2019年には40台と100倍以上に増えた。インド14億、アフリカ13億の人口も中国のようになることを望んでいる。中国のようにカーボンをどくどく吐き出してでも発電したいという彼らの熱望を、抑え込むことができるだろうか。文在寅政権の炭素中立委員会は、エネルギーの70%を新再生で賄いたいとし、その場合には電力貯蔵設備に700兆ウォン(現在のレートで約80兆円。以下同じ)から1200兆ウォン(約140兆円)かかるという試算を省くことまでやって「(カーボンニュートラルは)進むべき道であるため、所要の費用は考慮しなかった」と、知らぬ顔をした。韓国国民をだまし、自らも自己洗脳した。
カーボンニュートラルに向けて進もうと思ったら、動員できる科学技術と資源を総動員しなければならない。ところが民主党は、小型モジュール原子炉の研究費をまるごと切った。将来何でもって食べていくのか、爪あかほども考えていない。学生運動出身の文化人なのか左派の政治家なのか知らないが、観念環境主義にとらわれて、エネルギーにも「左派のエネルギー」「右派のエネルギー」があるかのように行動している。彼らが政府を運営していたとき、非正規職のためと称して導入した政策が非正規職を苦しめ、賃借人を助けるとしていた政策が賃借人を苦痛の中へと押し込んだ。エネルギーくらいは技術中立の姿勢でアプローチすべきだ。ハートは金庫に入れておき、頭脳は計算機で代替しろ、という言葉がある。
韓三熙(ハン・サムヒ)記者