韓国の進歩(革新)系最大野党「共に民主党」が国会の産業通商資源中小ベンチャー企業委で、原発分野の予算1820億ウォン(現在のレートで約208億円。以下同じ)を削り、新再生エネルギー予算4500億ウォン(約515億円)を増額して通過させた。原発の輸出もさせず(輸出保証予算250億ウォン〈約29億円〉)、次世代技術の開発も放棄し(小型モジュール原子炉の研究・開発予算333億ウォン〈約38億円〉)、原発産業生態系も駄目になるよう放置しておく(原発生態系支援1112億ウォン〈約127億円〉)内容だ。この国はまだ文在寅(ムン・ジェイン)幽霊政権が管理しているのかと錯覚しそうになる。
「脱原発の逆説」という言葉がある。文政権の脱原発は韓国原子力界に深い傷を負わせたが、長い目で見れば「苦い薬」になるだろう…というのがその中身だ。脱原発以前、環境運動圏は言うまでもなく、四方には原子力の敵しかいなかった。脱原発の討論が行われて初めて、原子力に対する理解が進むことになった。原子力は韓国にぜひとも必要なエネルギーだということ、原発の危険度は過度に誇張されていて、原子力こそクリーンなエネルギーだという事実が受け入れられるようになった。だが韓国野党による原子力予算カットを見ると、まだまだ遠いという思いを抱く。世論も重要だが、国会など制度権力を正常化できなければ、国家の前途は明るくない。
民主党の反原発志向は、原子力にかぶせられた誤った認識に基づいている。例えば、原子力は自然の元素を人間が無理に変化させて作り出した反自然エネルギーだと考え、逆に太陽光・風力は太陽の純粋自然エネルギーに由来するというものだ。しかし考え直してみると、太陽エネルギーも、原初的な出発点は太陽の持つ水素原子がヘリウムに結合することで生まれる核融合エネルギーだ。それも自然の元素変換だ。地球に作用するエネルギーには、太陽だけでなく地熱もある。地熱もまた、地殻内部のウラニウムなどが自然崩壊することで生まれた熱が、地殻の外へとにじみ出ているのだ。いわば、全てのエネルギーは、究極的には核変換から始まる。それはどれも自然エネルギーだ。
太陽光・風力は分散エネルギーだから民主的で、原子力は巨大集中エネルギーだから国民と消費者を権力の力で縛り上げる、という主張もある。理解できない論理だ。国民や有権者が望みのものを得られるとき、それが民主の理念の具現ではないだろうか。韓国国民は、各自が太陽光・風力を屋根に取り付けてエネルギーを自給自足することを望んでいるのか。違うだろう。どこかで誰かが最大効率で、安くてきれいなエネルギーを大量生産し、自分たちに必要な分だけたっぷり供給してくれることを望んでいるだろう。分散が民主的だというのなら、各家庭でコメと野菜も自ら作って食べる、そういうのが民主的で楽園だというのか。コメは少数の農民が集約生産して供給し、残りの人口はより生産的で興味ある仕事に従事するとき、楽園はいっそう近づく。