これまで日本軍慰安婦被害者が日本政府を相手取り起こした損害賠償請求訴訟はこの事件を含め2件だ。故ペ・チュンヒさんら12人が起こした訴訟では一審から元慰安婦らの主張が認められた。しかし当時日本政府は控訴など法的対応を全く取らなかったため、この判決はそのまま確定した。
この事件の一審宣告は2021年1月だったが、裁判長は「反人権的行為に対しては主権免除が適用されない」として日本政府に対し被害者1人当たり1億ウォン(約1100万円)の賠償を命じた。これに対して日本政府は「絶対に受け入れられない」として強く反発した。
日本政府の対応を見ると、今回の控訴審判決もそのまま確定する可能性が高いと法律に詳しい専門家はみている。控訴審の裁判長は「日本政府に送達する書類は返送され、日本政府が1965年の請求権協定と2015年の韓日合意が損害賠償請求権を消滅させたかなどについて弁論しなかった」と明らかにした。このままこの事件の判決が確定すれば、大法院(最高裁判所)が主権免除部分について判断を下す機会もなくなってしまう。
ある専門家は「日本政府の損害賠償責任を認める判決が確定すれば、韓国国内の日本政府の資産を差し押さえて売却し、被害者に賠償金を支払う手続きが始まる」「その過程で韓日関係にマイナスの影響が出るかもしれない」と予想した。2021年1月の一審判決が確定した訴訟では、日本政府の資産を把握する手続きがすでに行われている。
ある国際法の専門家は「司法による判断の範囲を超えた判決だ」「国家間条約で解決すべき問題に司法が判断を下すことは国際法的に正当かどうか疑問だ」と指摘した。別の専門家は「日本大使館や文化院などを強制的に差し押さえるのか」「日本企業を相手取った強制徴用訴訟よりもはるかに大きな波紋が出るかもしれない」との見方を示した。
日本外務省の岡野正敬外務事務次官は駐日韓国大使館の尹徳敏(ユン・ドクミン)大使を呼び「(控訴審)判決は非常に遺憾」とした上で「日本政府としては決して受け入れられない」として抗議した。日本メディアが伝えた。日本政府は「国際法違反の状態を修正する適切な措置を韓国政府が取るべきだ」と要求したという。
ヤン・ウンギョン記者、パン・グクリョル記者