「日本政府は慰安婦被害者に賠償せよ」 ソウル高裁が一審判決を覆す

韓国の裁判所「慰安婦訴訟」で初の二審宣告

 日本政府に対して韓国国内に居住する日本軍慰安婦被害者に損害賠償の支払いを命じる初めての控訴審判決が23日に宣告された。故クァク・イェナムさん、故・金福童(キム・ボクトン)さんの遺族や李容洙(イ・ヨンス)さんなど原告団16人が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟での判決だった。一審は「国際法上の『主権免除』により訴訟は成立しない」との判断を下したが、二審では逆の結論となった。主権免除とはある国の裁判所が他国による公権力行使に対して裁判権を行使できないとする原則だ。

【表】日本軍慰安婦被害者が日本政府を相手取った訴訟(1次・2次)

 ソウル高裁民事33部(ク・フェグン裁判長)は同日日本政府に対し、李容洙さんら被害者1人当たり2億ウォン(約2300万円)とこれに対する遅延損害金の支払いを命じる判決を下した。この裁判の争点は過去に日本が韓国を占領した状態で韓国民を日本軍慰安婦として強制動員した行為に対する主権免除が認められるかどうかだった。

 2021年4月の一審では「日本による慰安婦被害者への性的関係の強要は日本による(違法な)主権行為であり、主権免除が認められる」「慰安婦被害者による日本政府への損害賠償請求は認められない」との判断を下した。

 これに対して今回の控訴審は「日本が韓国領土で韓国民に行った不法行為に対し、主権免除が認められないとする国際慣習法があると考えるのは妥当」としながらも「日本は1930年代後半から40年代初めまで被害者を拉致、脅迫し、慰安婦生活を強要した不法行為に対して損害賠償すべきだ」と判断した。

 裁判長は「主権免除の法理は他国の裁判所が裁判権を一切行使できないとする『絶対的免除』から、非主権的行為に対しては主権免除が認められないとする『制限的免除』へと徐々に発展してきた」「国連裁判権免除条約、欧州国家免除条約、イタリア裁判所のフェリーニ判決、ブラジル最高裁判所の判決、2022年4月に宣告されたウクライナ最高裁判決などから、主権免除を認めない内容の判決は数多く確認されている」などと説明した。

 イタリア最高裁は2004年、第2次大戦当時ドイツで労役が強制されていたルイキ・フェリーニさんがドイツ政府を相手取って起こした裁判で、自国の裁判権を認めフェリーニさん勝訴の判決を下した。これに対してドイツはICJ(国際司法裁判所)に提訴し、ICJは主権免除に基づきドイツの主張を認めた。これについて今回の控訴審判決では「当時ICJは武力紛争中だったケースの主権免除を認めたが、日本の慰安婦動員は(韓日間の)武力紛争中ではなく、ICJ判決とも矛盾しない」との解釈が下された。

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  • ▲日本軍慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さん。李さんら原告団は23日午後、ソウル市瑞草区のソウル高等裁判所で日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の二審で勝訴し、声を上げて喜んだ。/聯合ニュース
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