ストライキの損失責任を労組に問うことができないようにする「黄色い封筒法」を通過させ、公営放送の理事の人数を増やして理事推薦権を外部団体に拡大する「放送3法改正」を押し付けた李在明(イ・ジェミョン)代表は、いかにも威風堂々という様子だった。つえを突き、憔悴(しょうすい)した姿で裁判所の令状実質審査に出席したのはいつのことだったかと思う。翌日には、自分を捜査していた検事らへの弾劾で陣頭指揮を執った。頑固だった尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が腰を曲げて頼む方向へ変化すると、頭をもたげた李代表が、大統領とは対照的にさらに大きく、拡大されて見える。「鬼神に取りつかれた」という言葉が思い浮かぶくらい、何かひどい思い違いをしている、という意味だ。
ネズミ捕りのかごに閉じ込められ、後ろの扉が閉ざされていないかどうか焦っていた先日の李代表の姿を、韓国国民は生々しく記憶している。李代表は、そんな韓国国民の記憶力を疑い、あるいは虚勢を張ることでその記憶を覆せると思っているらしい。カエルも、大きくジャンプする前は体をぎりぎりまで縮こめる。何日か温かい風が吹いたことで「春が来たらしい」と思い込み、そそっかしく動いたら、吹雪に見舞われるのが世の道理だ。
拘束令状が棄却され、李代表がさらに身を低くしていたら、器量が違って見えたかもしれない。大統領は予算国会演説を行う本会議場で、あまり知りもしない野党議員らに手を差し出しつつ、腰を曲げてあいさつをした。何人かの野党議員が大統領を無視する場面がテレビカメラに捉えられた。ある議員が「大統領に『もうお辞めください』と言った」と、武勇談のごとく自慢することもあった。
李代表が今、韓国国会で展開している攻勢は、政府に対する反対の意思表示ではない。政府をまひさせようとするものだ。民心の下方の温度はもう変わり始めただろう。政府がまひしたら、その被害は国民に跳ね返ってくる。韓国国民は厳しい暮らし、分裂する国の責任を大統領と与党に帰した。その結果が江西区庁長選挙だ。
大統領は選挙結果を民心の警告と受け止め、変わろうとしている。成果はともかく、印曜翰(イン・ヨハン)革新委員長は李代表と民主党より何倍も韓国国民の間で話題になった。民主党のかつての重鎮は「私が死んだという訃報のほかは、いかなる批判の声も、忘れられるよりはうれしい」と言っていた。その基準から見ると、民主党は落第点だ。