スウェーデンの電気自動車(EV)メーカー、ポールスターは2025年下半期から韓国・ルノーコリアの釜山工場で電動SUV「ポールスター4」を生産すると発表した。韓国国内向けに販売するほか、北米にも輸出する計画だ。ポールスターはボルボが49.5%を出資する筆頭株主だが、ボルボを中国・吉利汽車が2010年に買収したため、業界では韓国に中国車の生産拠点ができることになると指摘されている。
中国車が韓国市場に急速に浸透している。過去には上海汽車が双竜自動車を買収したほか、一部の中国ブランドが直接韓国市場で中国車を発売したケースがあったが、それとは異なる方式だ。米中対立と世界的なサプライチェーン再編の中で北米への輸出の道が閉ざされた中国企業が「メイドインコリア」の看板を付けるため、委託生産方式で間接進出を目指すケースが出始めている。また、中国EV業界首位の比亜迪(BYD)のように、韓国国内の反中感情を考慮し、ブランドは隠したまま、重要技術だけを移転・販売する一種の「デブランディング(ブランド分離)戦略」で韓国市場を攻略する例もある。
■「メイドインコリア」の看板狙う
ルノーコリアは国内販売不振で年産約30万台の釜山工場の稼働率が50%程度にとどまっている。このため、ポールスターが同工場に生産を委託するEVは、ルノーコリアにとって「恵みの雨」と言える。下請け業界や地域経済にもプラスになりそうだ。委託生産が実現できたのは、吉利汽車がルノーコリアの株式34%を保有する2位株主だったためだ。仕事が欲しいルノーコリアと中国以外に生産拠点が必要なポールスターの利害関係が一致した。
ポールスターは「メイドインコリア」のEVで韓国市場だけでなく、対米輸出で価格競争力を高める一石二鳥の効果を見込む。中国車には対米輸出時に27.5%という高率の関税がかかるが、韓国製ならば米国との自由貿易協定(FTA)で関税を回避できるからだ。
ルノーコリアはフランスのルノーグループ、吉利汽車と共に次世代ハイブリッド車も開発している。釜山工場で生産し、韓国国内でルノーコリアブランドで販売する一方、「韓国製」として輸出される予定だ。同モデルには吉利・ボルボがプラットフォームなど重要技術を提供した。