【独自】「趙瑪利亜が息子・安重根に送った『手紙』は日本人僧侶の作り物だった」(中)

 「控訴などせずに、すぐ刑に服するのですよ。そなたは、韓国人として祖国のために義挙を行ったのですから、控訴をすれば命を長らえるためにもなってしまい大変な恥になります。もしそなたが、年老いた母より先に死ぬのが不幸(原文ママ)になると考えて控訴するなら、この母の教育は一体なんであったかと笑われるのですよ」(斎藤泰彦『わが心の安重根』初版、214ページ)

 この内容は、同書が出版されるまではいかなる資料にも見られなかったものです。「義挙」「不孝」「笑われる」のように、もともと趙瑪利亜の伝言にはなく、後に出てくる手紙(a)にのみある言葉がまさにここで登場します。「すぐに刑に服すべき」という理由が、最初の伝言のように「現世の罪を償うため」ではなく、「義挙を行ったのだから」へと意味が完全に変わっているのです。

 これは明らかな操作だと都珍淳教授は評価しています。都教授は2010年5月22日に大林寺で斎藤氏と会い、本の内容の疑問点について尋ねてみましたが、斎藤氏はしばし沈黙した後、席を立ち、たばこを吸って戻ってきて、本の内容の一部を自分が操作したことを認めた後、急いでインタビューを終えた-といいます。「伝言」の部分についての釈明は聞くことができませんでした。

 斎藤氏が操作を加えたことが間違いないのであれば、斎藤氏はなぜ、そんなことをしたのでしょうか? 都珍淳教授はこのように答えました。

 「斎藤氏は大林寺に安重根の揮毫(きごう)『為国献身』の遺墨碑を建てました。本を出版した直後、大林寺は安重根と韓日交流の象徴へと浮上しました。韓国人の訪問を誘導するために安重根の本を書き、話を誇張する過程で、母親の手紙を操作・潤色したとみられます」

■2次脚色:韓国語版『わが心の安重根』

 ところが、同書が2002年に韓国語へ翻訳される際、原文にはない内容が追加されました。当該部分の韓国語翻訳を見ましょう。番号は都教授が付けたものです。

 「(1)おまえがもし、老いた母より先に死ぬことを不孝と考えるのであれば、この母は笑い者になるだろう。おまえの死はおまえ一人のものではなく、朝鮮人全体の憤怒を背負っているのだ。おまえが控訴をしたら、それは命乞いをすることになる。(2)おまえが国のためにここに至ったとあらば死しても光栄であろうが、母子はこの世で再び会うことはできず、その心情をかくのごときと語ることができようか…」

 斎藤氏の著書を翻訳する際、(1)では「韓国人全体の憤怒を背負っている」という、原文にはない内容が追加されました。ここに、1910年2月1日の新韓民報に載っていた二つ目の伝言の内容である(2)を新たに挿入し、「国のためのことをやったのだから公訴(控訴)するな」という文脈を作り上げました。


兪碩在(ユ・ソクチェ)記者

【写真】ミュージカル『英雄』での伊藤博文暗殺シーン(写真=ACOM)

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  • ▲ミュージカル『英雄』の一場面。殉国直前の安重根=ヤン・ジュンモ=の様子。/写真=ACOM

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