東京都墨田区で暮らす40代のある住民は、2月初めに、3万円を超える前月の電気料金通知書を見て仰天した。2人世帯だというこの住民は「普段は1万円くらいだったのに、いくら冬だとしてもこんな金額は初めて」と語った。だが周囲を見回すと、自分はまだましな方だった。ツイッターには「1月の電気料金6万5554円」という通知を撮った写真と共に「あまりに高い電気料金にあきれて、笑うしかない。テレビも見なくて、先月は3万7000円だった」という書き込みがあった。このツイートは、参照者数1245万人、「いいね」は3万9000件に達するほど日本人の共感を呼んだ。
30年間物価が上がらなかった日本で、20-30%にもなる電気料金の急騰は、日本人にとって経験したことのない大変な事件だ。東京電力は、ロシアによるウクライナ侵攻により石油・天然ガスの価格が急騰したせいで、やむを得ないと説明している。だがこれは「半分だけ正しい」真実だ。東京の住民は電気料金急騰の直撃を受けているが、大阪の住民の電気料金負担はそれほどでもないからだ。現在、同じ量の電気を使っても東京は大阪より20%ほど料金が高い。東京と大阪を分かつ差はたった一つ。原発が稼働しているかどうかだ。東電には稼働中の原発(発電用原子炉)が1基もないが、関電では5基稼働している。
日本は、10の電力会社が地域ごとに電気を供給する構造になっている。互いに異なる電力会社が火力発電所・原子力発電所・風力発電所など各種の発電所を保有・運営する方式で、これまでは電気料金が大きく違ったことはない。電気料金が政府のコントロールを受ける対象だったからでもあるが、もともと、各電力会社の事業構造がほとんど同じという側面も大きかった。状況が変化したのは、2011年の福島第一原発事故の後、各自治体の対応が違ったからだ。
当時、日本は57基の原発(発電用原子炉)をひとまず全て稼働中止とした。その後、徹底した審査を通過した原子炉のみを再稼働させた。自治体と地域住民の許しなしには再稼働は不可能で、東電・東北電・北電・中電・中国電など7社では今も原子炉を1基も再稼働できていない。逆に、関電と九電、四電は、一部地域住民の反発はありつつも合意点を見いだし、それぞれ5基、4基、1基の原子炉を再稼働させることに成功した。