済州のスパイ組織「ヒウッ・キヨック・ヒウッ(ハングル字母)」事件を捜査している国家情報院と警察は、北朝鮮とつながる地下組織が慶尚南道昌原、晋州、全羅北道全州など全国各地に結成されている動きを把握し、捜査を拡大していることが9日までに分かった。各地の地下組織を総括する上部組織の名称は「自主統一民衆前衛」とにらんでいるようだ。国家情報院はこれらの組織が各地の政治団体や社会団体はもちろん、建設労組や貨物労組など複数の労働組合に浸透している疑いについても捜査を行っている。1992年の朝鮮労働党中部地域党事件以来、最大規模のスパイ事件になるとの見方も浮上している。
捜査当局などによると、国家情報院は昨年末に済州道で北朝鮮の指示を受けたなどの容疑で関係者の自宅や事務所を家宅捜索したが、今回昌原、晋州、全州でも同じ容疑で家宅捜索を行った。容疑者らは「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」と同じく北朝鮮労働党直属の対南工作機関である文化交流局の指示を受け、地下組織を立ち上げこれを通じて反政府活動や利敵活動などを行った疑いが浮上している。容疑者らは北朝鮮工作員と海外の電子メールアドレスやクラウド用のID・パスワードを共有する手口で連絡を取り合ってきた。これは「サイバーDvok」と呼ばれる新たな手法で、この方法でこれまで数年にわたり北朝鮮と連絡を取り続けてきたという。
韓国の捜査当局は「自主統一民衆前衛は全国各地に散らばる北朝鮮の地下組織を総括する中央組織」とにらみ、昨年11月に昌原で活動するリベラル・左派団体の関係者少なくとも4人が住む住宅などを家宅捜索したという。本紙が入手した家宅捜索令状などによると、容疑者らは2016年ごろに昌原で自主統一民衆前衛を設立し、北朝鮮からの指令を随時受けながら反米集会や反保守闘争デモなどを行ってきた疑いがある。自主統一民衆前衛は「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」など済州・晋州・全州を含む各地の地下組織と連携し、全国民主労働組合総連盟(民労総)など合法団体の掌握に力を入れてきたという。北朝鮮は「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」に送った指令文で「民労総傘下にある済州4・3統一委員会の掌握」「労働組合や進歩系団体などを使った進歩政党候補者の後押し」などを指示したことも分かっている。北朝鮮の複数の地下組織は労働組合や政党など合法団体に浸透して組織を掌握する手口を使っているようだ。