【コラム】韓国外交の宿痾「恐中症」は治せないのか

中国のウイグル人権弾圧糾弾に、自由陣営50カ国のうち韓国だけが参加せず
「力による現状変更は駄目」と言う尹大統領の中国批判の一言で恐中症が治るだろうか

 そうして登場した習近平は中国の夢を叫び、中国を毛沢東時代に引き戻した。集団指導体制が崩れ、改革・開放は退潮した。韜光養晦(とうこうようかい、能力を隠して力を蓄えること)は沈んでいき、戦狼(せんろう)外交が本格化した。北京では王毅外相、ソウルではケイ海明大使の言行が日に日に荒っぽくなった。米国や西側はけん制路線へと進んだが、韓国はぐずった。もしかすると最大の市場を失いかねないという恐怖、北朝鮮の非核化と統一への協力を得られなかったらどうするかという心配を振り払えなかった。

 だから朴槿恵(パク・クンへ)元大統領は、米国からにらまれつつも天安門の門楼に上り、中国の戦勝節の軍事パレードを見守ったのだろう。習近平の回答は、無慈悲なTHAAD(高高度防衛ミサイル)報復だった。文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は、訪中時に取った10回の食事のうち8回が「一人飯」だった。恥をかかされても「中国は高い峰、韓国は小さな国」と言った。事情は違ったが、両大統領とも中国に対する迷いを捨てられなかった。韓国外交官の間に、恐中症が伝染病のように広がった。

 今年10月の中国共産党第20回党大会は、習近平が自らの終身政権を祝う手続きだった。一段と露骨に反民主と反市場へ退行する、という宣言だった。先日の「力による現状変更はいけない」という尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の発言は、中国に対する警告のように聞こえた。だが、そのわずか半月前に韓国は、自由民主陣営50カ国が国連で中国のウイグル人権弾圧を糾弾する声明を共同発表したとき、ただ1カ国そこから手を引いた。恐中症が宿痾(しゅくあ)と化したらしい。大統領の一言で治せるのか、確信は持てない。

李竜洙(イ・ヨンス)論説委員

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