妻との対話がかみ合わないのも問題だ。教育公務員として退職したイさん(67)は「退職してみると、妻は私の人生についてよく知らず、私も家事に関心がなかったので、妻がどんな人生を送ってきたのか分からなかった。だから互いに話すことがなく、意見の衝突だけが生じた」という。数十年にわたって積み重なってきた夫の実家に対する不満を妻が打ち明け、大げんかに発展することもあった。小学校の同窓生と結婚したBさん(64)は「妻が結婚初期にあった嫁しゅうとめ問題を今になって取り上げるため、それを聞いている私は嫌な気持ちになるが、時にはコントロールできなくなるほどだ」とあきれた表情で話す。
子どもたちも薄情だ。自分とは言葉を交わさず、妻とはまるで友人のようによく会話する。妻は、孫の面倒を見るため食べ物を作って子どもたちの家に出入りするが、男性たちにはそれも容易でない。子どもたちに勇気を出して話し掛けるが「コンデ(偉そうに振る舞う高齢者をばかにした表現)」「時代遅れ」と言い返されるのが落ちだ。国営企業の退職を3年後に控えたキムさん(58)は、娘(28)とテレビを見て「あの女性(芸能人)すごくスリムだね」と言ったら、娘に「外でむやみに外見を評価しようものなら、大変なことになる」と叱られた。キムさんは「そばにいる妻も娘の肩を持つが『一生家族たちを食べさせた私よりも芸能人の方が重要なのか』と感じ、とても寂しい思いになる」と肩を落とす。
引退後、家にいると気を使うため、仕事探しに出掛けることもある。地方高校の教頭を務めたパクさん(72)は、学校施設の管理職員として志願し、勤務していたものの、最近では障害者用のコールタクシー(電話などで呼ぶタクシー)の運転手として働いている。「この期に及んで体面が必要ですか。お金を稼いでこそ家長としての存在感を維持することができるので、とにかく頑張らなければなりません」
〈特別取材チーム〉金潤徳(キム・ユンドク)週末ニュース部長、キム・ヨンジュ社会政策部次長、卞熙媛(ピョン・ヒウォン)産業部次長、キム・ギョンピル政治部記者、ユ・ジョンホン社会部記者、ユ・ジェイン社会部記者、ユン・サンジン社会部記者