2016年11月、台湾の首都・台北の外郭にある「国聖原発」1号機が稼働を止めた。何か事故が起きたわけでも、故障が発生したわけでもなかった。使用済み核燃料(原発の稼働後に出る廃燃料棒)を貯蔵するスペースがこれ以上なく、原発の運転が不可能になったのだ。早くから予見されていた問題だったが、台湾電力当局はきちんと解決できなかった。2016年は、脱原発を目指す蔡英文政権が発足した年だった。
かといって、電力事情が十分ではない台湾が、国内原発設備の容量全体の20%を占める国聖1号機を放置することはできなかった。台湾電力当局は、交換作業中の核燃料を一時的に保管しておく貯蔵所を使用済み核燃料貯蔵施設に改造した。国聖1号機は、夏の電力需要が急増し始める2017年6月に再稼働に入った。だが、一時しのぎの方便では限界があった。国聖1号機は本来、40年の寿命が尽きる昨年12月末に永久停止される予定だったが、使用済み核燃料の貯蔵スペース不足により昨年7月に繰り上げ閉鎖された。
他国で起きたことではあるが、韓国に対しても示唆するところは大きい。韓国も、原発の使用済み核燃料処理問題を巡って「尻に火が付いた」状態にあるからだ。韓国国内の使用済み核燃料は、原発の敷地内で一時保管している。地中深くに埋めて処分する施設がないからだ。ところが、一時保管のスペースは徐々になくなりつつある。2031年に古里原発およびハンビッ原発、2032年にハンウル原発と、順次飽和状態に至る見込みだ。脱原発の破棄を宣言した尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が原発の稼働率を上げれば、飽和の時期が早まることもあり得る。臨時貯蔵施設は、建設するに当たり、許認可に要する期間を含め6-7年ほどかかるという。現在では、いつ着手するのか見当をつけることも難しい。国聖1号機稼働中断のような事態が韓国で起きる可能性も排除できないのだ。