「クアッド4カ国が中国をけん制するには宇宙分野での協力も必要」との見方はこれまで米国内で指摘されてきた。米ヘリテージ財団のディーン・チェン上級研究員は2017年の報告書の中で「距離の制約でクアッドによる軍事行動は互いに遠い距離を置いて行われるだろう」と指摘した。チェン研究員は「情報を提供して伝える宇宙基盤システムがなければ、米軍は潜在的な敵に対する偵察、複数の部隊における情報共有、作戦の調整、最新兵器の操作などで困難が生じるはずだ」「オーストラリア、インド、日本の軍も同様だ」と警告していた。
このような中で中国は2019年に無人探査機「嫦娥(じょうが)4号」の月面着陸にはじめて成功し、昨年は「嫦娥5号」によって月面の土壌などの採取にも成功するなど、積極的に宇宙への進出に乗り出しているが、これも新たな脅威として浮上している。米国家情報長官室(ODNI)は今年4月に米国を取り巻く国内外の脅威について分析・評価した年次報告書を発表し、その中で「中国が地球の低軌道に建設中の宇宙ステーションは、2022-24年の間に稼働開始が予想される」とした上で「中国は新たな月面探査を計画しており、月にロボット研究所を建設しようとしている」と警告した。
この報告書の中で米情報当局は「中国人民解放軍は米国が情報面で優位にあることを弱めるため、衛星による偵察、衛星測位システム(PNT)、衛星通信など宇宙でのサービスを引き続き彼らの武器あるいは指揮統制システムに統合させるだろう」と予想した。すでに低軌道衛星を破壊するため地上からの衛星攻撃用ミサイルを展開している中国が「地上の衛星攻撃用レーザーで米国の低軌道衛星に設置された精密な宇宙工学センサーを損傷させるため、引き続き衛星攻撃用兵器を展開するだろう」とも予想している。