政府は、セマングムの水上太陽光事業を進める際に「パネルは雨水で十分に洗われるため、別途の洗浄は必要ない」と説明していた。パネルの設置後、「放っておいても問題なし」というわけだ。ソーラーパネルを化学物質が入った洗浄液で洗い流すと水質汚染が懸念されるとの指摘についても「雨水ではなく地下水や水道水で洗浄すれば、そうした懸念にも対処できる」と述べた。しかし、実際に試験事業を行ってみたところ、予想とは全く裏腹の結果となったのだ。
洗浄液で鳥のふんを洗い流すにも、問題は山積みだ。海外の研究結果によると、ソーラーパネルの前面ガラスには「光反射防止コーティング」(ARC=Anti Reflection Coating)処理を施さなければならないが、洗浄液を誤って使用する場合、コーティングがはがれ落ちてしまうほか、化学物質洗浄液による水質汚染が懸念されるからだ。だからといって掃除をしないわけにはいかない。発電効率がダウンする上、鳥類の排せつ物に含まれる強い酸性物質は、パネルを腐食させ、性能を低下させてしまうためだ。
今年になって約60万メガワット規模の水上太陽光を設置したシンガポールの太陽光研究所は「鳥のふんなどによってパネルに陰影ができ、太陽光を均一に受け取ることができなくなると、熱と過負荷による『ホット・スポット』現象が生じる」としている。何よりも、セマングムに敷かれている数百万枚のパネルを周期的に清掃しなければならないこと自体が一大事との話もある。