その代わりにチョさんは国家報勲処が指定した全国421カ所の民間委託病院を利用している。全国各地にあるので比較的行きやすい。ただしこれらの病院では診療費については90%支援が受けられるが、薬代は例外だ。最終的にチョさんのように移動が大変な場合、薬代全額を自分で支払うしかない。参戦有功者法施行令には「委託病院を利用する場合、薬剤費用は除外する」と明記されている。チョさんは「名誉手当は全額を薬代に使うので、『名誉』という大義名分はずいぶん前に消え去った」とも述べた。
江原道江陵市に住む6・25参戦有功者のキム・ヨンホさん(90)も同じ事情を抱えている。キムさんは「疾患が一つ増えるたびに薬代は天井知らずで高くなる」「負担を感じているが、生きるために払うしかない」と語る。
韓国政府もこの問題を把握している。国民権益委員会は2019年に国家報勲処に対して制度の見直しを勧告したが、それから2年が過ぎても何も変わっていない。理由は「予算不足」だ。国家報勲処の関係者は「権益委員会から勧告を受けた2019年にはすでに次年度予算案が確定していたので反映できず、20年には予算案に反映して企画財政部(省に相当)に提出したが、最終予算案から外された」「参戦有功者の大変な事情は把握しているので、制度を改善するため努力している」とコメントした。制度の改善を勧告した国民権益委員会は「委託病院を利用するのは遠方に居住しているか高齢によって移動が大変な方たちで、いわば参戦有功者の中でもさらに弱い立場にあるケースだ」「引き続き状況を見守りつつ、勧告の実行を求めていきたい」との考えを示した。